2020 Fiscal Year Research-status Report
健康寿命に寄与する葉酸の機能解析と食生活への応用-生涯を通した葉酸摂取の重要性-
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19K02372
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 葉酸 / ホモシステイン / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉酸の欠乏によって誘導される血中ホモシステイン濃度の上昇が、脳血管疾患、骨粗鬆症、認知症の発症に関連していることが注目されている。しかしながら、これらの多くは疫学調査をもとにしており、実験的検証はほとんどされていない。申請者は長年、葉酸の生体内での機能を明らかにする研究を続けている。その中で、葉酸がホモシステインの代謝を遺伝子レベルで調節することを明らかにし、ホモシステイン代謝において葉酸が主要な調節因子であることを見出している。そこで本研究では、ホモシステイン濃度の上昇が疾患の発症にどのように関与するのか、その分子メカニズムを解明し、葉酸の新規機能について実験的エビデンスを基に明らかにすることを目的としている。 昨年度は、ヒト動脈硬化モデルのapoE欠損マウスにホモシステイン水を長期間摂取させた結果、血漿の総コレステロールおよびnon-HDLコレステロール濃度には変化ないものの、血中ホモシステイン濃度の上昇に伴い大動脈への脂肪沈着が有意に増加することを見出し、ホモシステインの上昇が動脈硬化の進展に影響を及ぼす可能性を示唆した。 今年度は、ホモシステイン水摂取に加えてコレステロールを負荷し、両者の相互作用について検討した。コレステロール負荷によって血漿の総コレステロールおよびnon-HDLコレステロール濃度は増加し、血管への脂肪沈着も増加したが、ホモシステインの上昇によって誘導される血管への脂肪沈着は、わずかに増加した程度であった。今回行った条件では、両者の相互関係を認めることはできなかったが、ここまでの実験結果から、ホモシステインの上昇はコレステロールとは独立して、動脈硬化発症のリスク因子になる可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究経過から、血中ホモシステイン濃度の上昇が血管への脂肪沈着を促進し、動脈硬化発症のリスク因子であるコレステロールとは独立して、病態の進展に影響を及ぼす可能性を見出している。私たちはこれまでに、葉酸がホモシステイン代謝の重要な調節因子であることを示しており、葉酸の欠乏が動脈硬化発症にどのように影響するのかを解明するための基礎データを得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究により、血中ホモシステイン濃度の上昇が血管への脂肪沈着を促進し動脈硬化の進展に影響を及ぼす可能性を明らかにすることができたので、葉酸欠乏により誘導されるホモシステインの上昇が、動脈硬化病変の形成にどのような影響を与えるのかを検討する予定であり、すでに実験を開始している。具体的には、apoE欠損マウスに葉酸欠乏食を与えて一定期間飼育後、大動脈を採取し、血管への脂肪沈着、血管の肥厚、動脈硬化病変に集積するマクロファージ等を観察するとともに、血管における動脈硬化関連遺伝子の発現変動等を解析し、葉酸欠乏によるホモシステイン濃度上昇が動脈硬化病変形成に及ぼす影響を調べていく。
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