2021 Fiscal Year Annual Research Report
健康寿命に寄与する葉酸の機能解析と食生活への応用-生涯を通した葉酸摂取の重要性-
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19K02372
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 葉酸 / ホモシステイン / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉酸の欠乏によって誘導させる血中ホモシステイン濃度の上昇が、脳心血管系疾患、骨粗鬆症、認知症の発症に関連していることが注目されている。動脈硬化による脳心血管系疾患や骨粗鬆症は、食生活をはじめとした生活習慣や加齢によって経年的に進行し、高齢期の生活の質に大きく影響すると考えられる。そこで本研究では、ホモシステイン濃度の上昇が疾患の発症にどのように関与しているのか、その分子メカニズムの解明を目指し研究を進めてきた。ここまでの研究期間で、血中のホモシステイン濃度の上昇は血管への脂肪沈着を促進し、コレステロールとは独立して動脈硬化の進展に影響を及ぼす可能性を明らかにした。 一方で、葉酸は妊娠期間中の胎児の正常な発育に必要な栄養素であり、妊娠前からの葉酸摂取が推奨されている。現在、母親の栄養状態が児の成長後の代謝に影響を与え、成人期以降の疾患へのかかりやすさに関連するという考えが注目されている。そこで本年度は、葉酸欠乏の母マウスから生まれた仔に成獣期まで高脂肪食を負荷し、母マウスの葉酸欠乏が次世代の脂質代謝に及ぼす影響を解析した。その結果、葉酸欠乏の母から生まれた仔では、成獣期に至るまで高脂肪食を負荷すると、肝臓脂質の蓄積が亢進していた。さらに普通食を摂取した場合でも、成獣期に肝臓脂質量が有意に増加した。以上より、母親の葉酸欠乏が、仔の成獣期における脂質代謝反応にまで影響を及ぼし、脂質代謝の変動に起因する各種疾患の罹患性に影響を与える可能性が考えられた。 これらの研究結果から、妊娠前からの葉酸摂取は次世代の健康に影響を与えること、そして胎児から高齢者までヒトの生涯を通して葉酸摂取が重要であることが示唆された。
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Research Products
(3 results)