2020 Fiscal Year Research-status Report
恒常性維持の面からみたコラーゲン由来機能性ペプチド
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19K02376
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
神山 伸 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (70525401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コラーゲンペプチド / 軟骨分化 / 脂肪蓄積 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度明らかにしたコラーゲンペプチド(CP)による内臓脂肪の減少作用について、英語論文として報告した。また、昨年度の結果を受け継いで、CPが脂肪蓄積と軟骨分化に及ぼす作用についてさらに検討を行った。 まず、脂肪前駆細胞である3T3L1細胞を用いて、CP由来ジペプチドであるHyp-GlyとPro-Hypが脂肪細胞の分化と肥大化にどのように影響するかを検討した。3T3L1細胞を脂肪細胞に分化誘導した後、1 mMのHyp-GlyあるいはPro-Hypで7日間処理した場合では、脂肪細胞の分化指標であるグリセロール3リン酸脱水素酵素(GPDH)活性に変化はみられなかったが、CPを動物へ投与した場合と異なり、Oil Red Oによる脂肪滴染色量と細胞内のトリグリセリド量が有意に増加した。遺伝子発現量の測定では、Hyp-Glyの添加により脂肪合成酵素であるDGAT1の発現量が有意に増加しており、脂肪合成に関わる転写因子であるPPARγについても増加傾向が見られた。インスリンとCPを同時添加した場合で細胞内への脂肪蓄積がより促進されたことから、CPのこの脂肪蓄積促進作用にはインスリンシグナルが関与している可能性が示された。 また、軟骨前駆細胞であるATDC5細胞の分化を女性ホルモンであるエストロゲンで抑制したモデル系において、CPがその軟骨分化と細胞外マトリックス産生にどのように作用するかを検討した。10μMのエストラジオールで処理した細胞ではコラーゲン量とプロテオグリカン量、カルシウム沈着量のいずれも有意に低下したが、1 mMのHyp-Glyを添加することによりコラーゲン合成量が有意に増加した。しかし、プロテオグリカン量とカルシウム沈着量に対する影響は認められず、軟骨化関連遺伝子の発現量にも変化が認められなかったことから、CPはエストロゲンによる軟骨分化抑制自体を救済できないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症の広がりと関連して、新たな動物実験を行うことが不可能となった。また、大学における研究活動自体が制限されたことから、培養細胞を用いた実験に関しても予定した実験を行えなかった部分が生じた。今年度行えなかったコラーゲンペプチドの作用の分子機構解明に関しては、次年度以降の研究で行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き軟骨分化モデルであるATDC5細胞を用い、コラーゲンペプチドが軟骨分化に及ぼす影響についてTGF-β/Smadシグナルを中心としたシグナル応答の状態変化を検討することにより、その作用機構の詳細を解析する。 コラーゲンペプチドが線維化に及ぼす影響としては、肝臓の線維化モデルとして3T3L1を用いた系と、肺の線維化モデルとして肺腺がん由来細胞株であるA549を用いた系を検討し、TGF-βによるコラーゲン合成と線維化の亢進にコラーゲンペプチドがどのように作用するかについて検討する。 また、脂肪細胞の分化におけるコラーゲンペプチドの作用は、インスリンの作用と協働している可能性が示唆されたため、引き続き3T3L1による脂肪細胞分化モデルを用いてAktカスケードとRas/MAPK経路を中心にインスリンシグナルの伝達状態について検討する。また、TNF-αやMCP-1、IL-6のような炎症性サイトカインについてその遺伝子発現量や分泌量を測定することにより、CPがインスリン抵抗性に与える影響についても検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、予定した実験の一部を行うことができず、次年度使用額が生じた。2021年度分と合わせて、2020年度に遂行できなかった実験についても行う予定である。
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