2021 Fiscal Year Research-status Report
恒常性維持の面からみたコラーゲン由来機能性ペプチド
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19K02376
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
神山 伸 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (70525401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コラーゲンペプチド / 線維化 / TGF-β / 軟骨分化 / 脂肪蓄積 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨分化モデルとしてATDC5細胞を用い、TGF-βシグナル応答を中心にコラーゲンペプチド(CP)が軟骨分化に及ぼす影響を検討したが、CPによる明確な変化は確認できなかった。そこで、コラーゲンペプチドが線維化に及ぼす影響として、マウス胚性線維芽細胞であるNIH3T3細胞と、ヒト非小細胞肺がん(腺がん)由来細胞株であるA549細胞を用い、CPが線維化と上皮間葉転換(EMT)に及ぼす影響について検討した。 NIH3T3細胞はTGF-βによる線維化誘導条件の下、コラーゲン由来ジペプチドであるPro-HypあるいはHyp-Glyを添加し、細胞増殖アッセイと創傷治癒アッセイにより、細胞増殖と遊走性に及ぼす影響を検討した。また、線維化の指標遺伝子の発現状態をリアルタイムPCRにより確認した。A549細胞はTGF-βによる刺激の下、Pro-HypあるいはHyp-Glyを添加した条件でEMTを誘導し、細胞増殖能、コラーゲン合成、EMT関連因子の遺伝子発現、及び平滑筋アクチンの発現状態について確認した。 その結果、NIH3T3細胞では、細胞増殖能と創傷治癒能、線維化指標の遺伝子発現においてTGF-β刺激による変化は認められず、CP添加による影響も認められなかった。一方、A549細胞においては、TGF-β刺激によりコラーゲン合成量の有意な増加が見られたが、Hyp-Glyの添加により有意に抑制された。さらに、TGF-β刺激により上皮細胞のマーカー分子であるE-cadherinの発現が減少し、間葉系細胞のマーカー分子であるα-SMAの発現が大きく上昇したが、Pro-HypあるいはHyp-Glyに添加により発現量が大きく低下した。これらのことから、これらのCPはTGF-β誘導によるA549細胞のEMTと線維化を抑制するとともに、その運動性を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度においても新型コロナウイルス感染症による制約が生じ、予定した動物実験を行うことができなかった。また、培養細胞を用いた実験に関しても一部、予定した実験を行えなかった部分が生じた。CPが線維化に及ぼす影響について、線維化モデル動物を用いた検討と、その作用の分子機構の詳細に関しては、次年度の研究で行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
CPが線維化に及ぼす影響について、引き続きA549細胞を用いて検討を行う。CPがEMTとそれによるコラーゲンの過剰合成を抑制する可能性が示されたことから、次年度はその機構解明を中心に検討する。ただし、TGF-β刺激によるEMTの誘導状態が明確ではなかったことから、線維化誘導条件を検討して行う。 さらに、線維化モデル動物としてブレオマイシン投与による線維症モデルマウスを用いて、その線維化の状態にCPの投与がどのように影響するかを検討する。ここで、線維芽細胞であるNIH3T3細胞ではCPの作用が明確ではなく、肺がん由来のA549細胞で線維化の抑制がみられたことから、特に肺線維化に及ぼす影響を中心に検討する。食餌中の持続的なCP摂取が線維症モデルマウスの線維化発症状態にどのように影響するかについて検討するとともに、肺における線維化関連遺伝子の発現状態と、血中における炎症性サイトカインの状態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2021年度においても新型コロナウイルス感染症対策による制約のため、予定した実験の一部を行うことができず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2021年度に遂行できなかった実験の遂行のために使用する予定である。
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