2022 Fiscal Year Annual Research Report
恒常性維持の面からみたコラーゲン由来機能性ペプチド
Project/Area Number |
19K02376
|
Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
神山 伸 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (70525401)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | コラーゲンペプチド / 肺線維化 / 抗炎症作用 / ブレオマイシン / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は肺胞上皮由来細胞株(A549)をトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)刺激によって線維芽細胞へ転換した細胞を線維化モデルとして用い、コラーゲンペプチド(CP)が線維化に与える影響について検討した。その結果、高濃度のTGF-β刺激ではCPの作用は明確ではなかったが、低濃度のTGF-β刺激では線維化に関わる上皮間葉転換を抑制する傾向がみられた。 さらに、線維化モデル動物としてブレオマイシン投与による線維症モデルマウスを用いて、その線維化の状態にCPの投与がどのように影響するかを検討した。10 mg/kgのブレオマイシンを2週間皮下投与することにより肺線維症を誘発させたC57BL/6Jマウスに、1gあたり25 mgのCPを添加した実験飼料を3週間摂取させた。その結果、ブレオマイシン投与マウスでは肺重量が有意に増加するとともに、肺組織での肺胞の破壊と間質の増加が見られたが、これらはCPの投与により軽減された。肺組織の線維化関連遺伝子の発現量を測定したところ、炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)と、間質性肺炎のマーカーであるMCP-1、線維化分子であるフィブロネクチンの発現量がブレオマイシン投与により増加したが、CPの摂取により抑制された。これらのことから、ブレオマイシンの皮下投与によって惹き起こされる間質性肺炎と肺線維化は、CPの摂取によりその発症を抑制できる可能性が示された。一方、線維化の主要な因子であるコラーゲン線維に関しては、ブレオマイシン投与動物で肺組織におけるコラーゲン含量と、I型およびIII型コラーゲンサブユニット遺伝子の発現量増加が認められたが、これらはCPの摂取により抑制されなかった。したがって、CPはコラーゲンの合成を抑制するのではなく、炎症を軽減することにより間質性肺炎の発症を抑制するものと考えられる。
|