2020 Fiscal Year Research-status Report
赤外線とデジタル技術を活用した仙台型紙の調査と型染文様の伝承
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19K02378
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Research Institution | Tohoku Seikatsu Bunka College |
Principal Investigator |
川又 勝子 東北生活文化大学, 家政学部, 准教授 (50347910)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域文化研究 / 伝統工芸 / 染色 / 型紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治から昭和にかけての仙台地方の型染め染色の特産品として常盤紺形染と注染の手拭と浴衣があった。これらの型染め文様等をデジタルデータとして保存し、そのデータのデジタル機器等を用いた型紙復刻や型染染色方法に活用する研究および型染め文化遺産を小・中・高等学校教育や大学専門教育に生かす教育プログラムの開発研究、すなわち「仙台型染めデジタルアーカイブ研究」を行ってきた。当年度も新しい型紙デジタル情報を『仙台型染資料集XV』として発行した。 加えて、三四半世紀以上の経年劣化・変色により可視光線では読み取れなくなった型紙に記載されている文字情報等を赤外線スキャナにより読み取り、当時の仙台地方染色業の情報を得ると共に東北地方の染色文化史・服飾文化史の知見を得ることを目的とし、当該年度には、東北歴史博物館所蔵の旧最上染工場由来の常盤紺型について調査研究を行った。 その結果、型紙の等級を示すと推測される黒印を有する型紙26.4%、朱印を有する型紙が29.4%あった。一方「墨書」を有する型紙は8.8%と僅かであった。漢数字が記されているものと、二枚型であることを示す描画を有するものとが見られた。また、61.8%の型地紙に反故紙が使われていることが分かった。これらのうち年代等を示す記載があるものが20.6%あるが、いずれも最上染工場が仙台に移転した明治23年以降の日付等が記されていた。 また、仙台地方の伝統型染め型紙の復刻研究として、デジタルデータを活用して、当年度導入した中型カッティングプロッターを用いて常盤紺型紙の切断を行った。その結果、検討した切断条件を用いて良好な結果を得ることができた。 さらに、常盤紺形染を小・中学生に伝えるための家庭科実習教材についても新たな検討を行い、デジタルデータとカッティングプロッターを用いることで、これまでより短時間で常盤紺形染の文様上の特徴を理解させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度は新たに導入したカッティングプロッターを用いることで、これまでに収録してきた型紙のデジタルデータを活用した型紙文様複製に取り組むことができた。文様切断用データを今後も増やしていきたい。また、切断用データとプロッター切断型紙を活用した小・中学校家庭科実習教材の試案を作成したので学会(2021年日本家政学会全国大会)に発表する。 赤外線スキャナを使用した型紙調査は、学外資料(東北歴史博物館所蔵常盤紺型)を対象とした調査を行った。多数の型地紙には反故紙が用いられており、その記載された地名から広範囲にわたる地域から集められ、型紙制作に再利用されていることなど幾つかの興味ある歴史的事実が明らかになったが、新型コロナウイルスの影響、および、頻発している震度5以上の地震により、急遽閉館を余儀なくされた施設等もあり、調査を行えなかった資料も残されている。引き続き、来年度以降も調査を継続するとともに、常盤紺型以外でも仙台地方に残されている型紙の赤外線画像撮影を試みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、常盤紺型等の型紙を対象として、可視光線では読み取ることのできない文字情報について赤外線イメージスキャナを用いた読み取り調査を行う。これらの判読データから型紙の産地や編年等について考察したい。新型コロナウイルスや地震等の影響により、今後も学外公的施設等での調査が難しいことも予測されるため、注染・半纏等の染色に用いられた民間所蔵の染型紙まで調査対象を広げ、数量確認・計測・赤外線画像撮影と分析等の調査を行い、デジタルアーカイブを進めることで、仙台地方の染色産業史および服飾文化史についての知見を深めていきたい。 また、型紙の復刻についても引き続き検討する。すなわち、中型カッティングプロッターを用いて、常盤紺型の代表的な文様や特徴的な文様を中心に型紙復刻を行う。さらに、これまでに保存している仙台地方で製作された浴衣・手拭文様の復刻にも着手する。注染型紙など大型型紙の場合、カッティングプロッターの性能によって繊細な文様が再現よく表現される最適条件を見出す必要があるので、2021年度に検討する。 さらに、仙台地方の染色文化遺産として教育に生かすための教育プログラムの開発についても引き続き検討する。研究期間中に得られた型紙画像データ等は、当年度も『仙台型染資料集』の続刊に掲載するとともに、デジタルデータベースに随時加えていく。すなわちデジタルデータの蓄積とその活用の研究「仙台型染めデジタルアーカイブ研究」の一層の進展を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、研究発表を予定していた2つの学会が中止となったために、学会出張の旅費が発生しなかった。 さらに同様の理由から、計画していたとおりの学外資料調査を行うことができなかったため、調査に係る消耗品費・謝金・機材運搬費等が予定どおりに発生しなかった。 これらの次年度使用額については、今後の調査費用として使用することを計画している。具体的には、今後の研究推進方策にも記したように、調査対象を拡大するために要する調査協力者の増員、資料記録用端末を導入するなどして、調査・研究の効率化を図るために使用する。
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