2019 Fiscal Year Research-status Report
Functional characterization of novel carotenoids-protein complex with aqueous properties found in vegetables and fruits
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19K02383
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
安藤 清一 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (80131986)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カロテノイド / 特異的タンパク質 / 複合体 / 水溶性化 / 機能性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、野菜や果実類に存在するカロテノイドが水溶性に可溶化されることを見いだし、脂溶性カロテノイドの水溶性化に関わる特異的タンパク質の単離と構造上の特徴を明らかにすることを目的とする。 植物性食品における水溶性カロテノイドの存在を明らかにするために、ウンシュウミカン、マスクメロン(赤肉)、カキ、ニンジンの可食部から、水溶性溶媒(蒸留水、0.9%食塩水、5%ショ糖溶液)によるカロテノイドの抽出を試みた。すなわち、果肉重量の4倍量の各種水溶性溶媒でホモジナイズし、遠心分離(20,000xg、20分、5℃)によって上清画分と沈殿画分に分画後、両画分をアセトン処理し、カロテノイドの抽出・定量を行った。 試料100gに含まれるカロテノイド量は、ニンジン7.5mg、マスクメロン(赤肉)3.5mg、ウンシュウミカン3.2mg、カキ1.3mgであり、遠心分離後の上清画分に存在するカロテノイド量の割合は、マスクメロン(赤肉)57.4%、ニンジン8.0~24.7%、カキ20.4%、ウンシュウミカン7.2~8.6%であった。 遠心分離後の上清画分に存在するタンパク質量を色素結合法で定量した結果、マスクメロン(赤肉)280μg/mL、、ニンジン114~140μg/mL、カキ74μg/mL、ウンシュウミカン24~29μg/mLであり、上清画分に分布するカロテノイド量とタンパク質量との間には、関連性があることが示唆された。また、5%ショ糖溶液で可溶化されたマスクメロン(赤肉)の上清画分をゲル濾過カラムに供した結果、カロテノイドはタンパク質と同一の溶出位置に存在し、カロテノイドとタンパク質との複合体の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、カロテノイドを含む野菜や果実類を対象として、水溶性に可溶化されるカロテノイドの調製方法を確立すること、また水溶性に可溶化されるカロテノイドの形成に関わる因子についても明らかにすることを研究課題とした。 水溶性に可溶化されるカロテノイドの調製方法については、蒸留水、0.9%食塩水、ショ糖溶液などの水溶性溶媒を用いて、β-カロテンを含むニンジンやマスクメロン(赤肉)、β-クリプトキサンチンを含むウンシュウミカンやカキの果肉をそれぞれホモジナイズし、水溶性に可溶化されるカロテノイドを遠心分離後の上清画分に回収する方法を確立することができた。また、遠心加速度(5,000~50,000xg)と遠心時間(10~120分)について検討した結果、20,000xg、20分の遠心分離によって上清画分と沈殿画分に分離することが可能となった。 水溶性に可溶化されるカロテノイドの形成に関わる因子については、遠心分離後の上清画分に存在するカロテノイド量とタンパク質量との間に関連性があること、またマスクメロン(赤肉)の上清画分をゲル濾過カラムに供した結果、カロテノイドはタンパク質と同一の挙動を示したことから、リポタンパク質やアンテナ色素タンパク質複合体のように、特異的タンパク質が脂溶性であるカロテノイドの可溶化に密接に関係していることが示唆された。 したがって、令和元年度の研究成果は当初の研究計画に従って得られたものであり、おおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の研究成果を踏まえ、令和2年度以降の研究ではカロテノイドを水溶性に可溶化する特異的タンパク質の単離と、特異的タンパク質組換え体によるカロテノイド水溶性化の有効性について取り組む。 カロテノイドを水溶性に可溶化する特異的タンパク質の単離については、遠心分離後の上清画分を硫安塩析(飽和度45-75%)、次いでイオン交換およびゲル濾過カラムクロマトグラフィーに供し、450nmにおける橙色をモニターすることにより、特異的タンパク質を精製する。精製タンパク質のN末端および内部アミノ酸配列に基づくPCRを行い、特異的タンパク質をコードする遺伝子を増幅・単離し、遺伝子データベース検索によって相同性のあるタンパク質を特定する。 特異的タンパク質組換え体によるカロテノイド水溶性化の有効性については、カロテノイドを水溶性に可溶化する特異的タンパク質cDNAを融合タンパク質発現用ベクターpGEXに組み込み、タンパク質発現用ベクターを作製し、宿主大腸菌を形質転換させる。大腸菌発現系によって誘導された組換え体タンパク質を用いて、β-カロテン、β-クリプトキサンチン以外のカロテノイドの水溶性化を調べる。また、脂溶性カロテノイドの水溶性化に関わる特異的タンパク質の新たな可能性を探るために、ラジカル消去能や抗酸化活性を指標として、水溶性化したカロテノイド-タンパク質複合体の機能性解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年3月に開催される園芸学会に参加するように準備していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、急きょ学会の開催が中止になり、旅費の大半が未執行となった。 研究成果を論文にまとめるための時間を確保することが難しかったために、英文校閲および論文別刷の経費が未執行となった。未執行の消耗品費を令和2年度に繰り越し、カロテノイドを可溶化する特異的タンパク質の単離に必要な消耗品費として使用する予定である。
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