2019 Fiscal Year Research-status Report
追熟バナナに含まれるグルテン代替成分と製パン時における膨化(気体保持)機構の解明
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19K02385
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Research Institution | Hyogo University |
Principal Investigator |
細川 敬三 兵庫大学, 健康科学部, 教授 (30311393)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小麦澱粉 / 大粒澱粉 / 小粒澱粉 / 製パン性 |
Outline of Annual Research Achievements |
小麦タンパク質グルテンは、アレルギーやセリアック病の原因となる成分である。このため、小麦製品を食べることができない人々は、食事を制限されることになる。申請者は、追熟バナナがグルテンの代替として利用できる可能性を見出し研究を実施している。追熟バナナに含まれるグルテン代替成分の特性評価を製パン試験により行っている。このためグルテンを含まない小麦澱粉の製パン特性と比較することによってグルテン代替成分の特性を知ることができる。本年度は主原料として使用するグルテンを含まない小麦澱粉での製パン特性について検討した。 小麦粉から調製した主に大粒と小粒の澱粉粒から成る小麦澱粉(S1)とS1から調製した主に大粒の澱粉粒から成る画分(S2)と主に小粒の澱粉粒から成る画分(W3)を用いて製パン試験を実施した。これら3種類の小麦澱粉を原料とした製パン性の最適加水量を調査した。S1~S3でそれぞれ70、60、100bakers%と澱粉粒のサイズにより最適加水量が異なっていた。 次に、発酵によりパン生地が膨化するためには、発生した気体(二酸化炭素)を包み込んで保持する必要がある。このためには大粒と小粒の両者の澱粉粒が必要であることが明らかになった。この時の澱粉粒の挙動としては、大粒澱粉の挙動が重要で、発酵初期には大粒澱粉は方向性の無いランダムな配列をしているが、発酵が進み気泡が大きくなるに従い平たい面を気泡面に向けた状態に移行する。一方、小粒澱粉は大粒澱粉の隙間を埋めることにより気泡を形成していた。また、発生した気体は、生地から漏れることなく発生した気体がほぼ全て気泡内に包み込まれていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
追熟バナナに含まれる小麦たんぱく質グルテンの代替となる成分の特性と特定に関して研究を実施している。評価の比較対象となる小麦澱粉3種類(大粒澱粉と小粒澱粉の混合、大粒澱粉が主体、小粒澱粉が主体)を用いて製パン性を基準にして小麦澱粉の挙動について調査を行った。この結果、大粒澱粉と小粒澱粉の両者の重要性が明らかになった。従って、追熟バナナに含まれるグルテン代替成分の評価は、従来の製パン試験に加え、澱粉粒子の挙動を調べることによって実施できることがわかった。また、生地の気体保持能を測定することも評価の対象として重要であると考えられデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
追熟バナナから透析膜により分子量50,000以上の画分を調製し、この画分を用いて以下の点について研究を進める。 1)製パン過程における内相の変化を実体顕微鏡で、澱粉粒の挙動を走査型電子顕微鏡で観察し、上記画分が生地の形成にどのような効果を示しているのかを明らかにする。 2)上記画分からグルテン代替成分を特定する。現在、代替成分として高分子成分であるペクチン質と推定している。従って、上記画分からペクチン質を分離し、各種溶剤に対する溶解性の違いからペクチン質のタイプを、平均分子量の推定、構成糖組成の分析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
(1)走査型電子顕微鏡による観察を予定しその経費を考えていたが、公的試験機関での使用が可能になったため、その費用の支出がなくなった。 (2)論文を投稿しており、投稿費を本年度に支出する予定であった。現在、審査中のため本年度からの支出がなかった。この経費を今年度の繰越金から支出したい。
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Research Products
(1 results)