2022 Fiscal Year Research-status Report
自己に内在する公共性を喚起し、個人と公共性の矛盾を解消する道徳教育の在り方
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19K02390
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
生越 達 茨城大学, 教育学研究科, 教授 (80241735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 共感的理解 / 対話の対等性 / 対話の多層性 / オープンダイアローグ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公共性は教育によって外から注入されるべきものではなく、人間存在の内にすでに存在しているということ、ただ競争原理が重視される現代社会においてはこの公共性は外在化しにくいのではないかということ、こうした二つの仮説のもとに、この仮説の真偽を明らかにし、もし真理だとすれば、どのようにすれば内在する公共性を外在化できるのかを明らかにすることを目的とした。 まず明らかになったことは、ハイデッガー現象学、ブーバー対話哲学、ロジャーズ心理学ばかりではなく、生物の進化や文化人類学研究、さらには精神医学をはじめとする医学研究などをとおして、公共性が人間存在の根底に存在すること、したがって個と公共性は矛盾するのではなく、個の内側に深く公共性が浸透していることであった。 そこで次に対話哲学等をとおして明らかにしたことは、それでは内在する公共性を喚起するためには、どのような実践が求められるかということであった。それは対等性と多層性に拓かれた対話をすることそれ自身が、人間を公共性に拓き、個であることと公共的存在であることとの矛盾を解消できるということであった。 道徳教育という視点から具体的に考えると、教材として人間が対話的存在であることに重点を置くこと、またその教育方法としても、対等性と異質性(多層性)を大切にした対話を取り入れること、また日常の学級経営や授業を対話的に実践することが対話の地盤づくりとして必要なこと、などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は研究の最終年度だったが、実際には具体的な道徳の授業を意識するところまでは研究を進めることが出来なかった。上記で明らかになった点を踏まえて、具体的なカリキュラム作りや授業づくりを創ることが残る課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的な研究はすでに目途がたっているので、今年度は道徳の授業に関する先進例などを研究しながら、具体的なカリキュラムや授業例について検討する課題を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で道徳教育に関する先進授業の観察等ができなかったため、公共性を喚起する道徳授業の実際のデザインに関して課題が残ってしまった。そのため、授業観察の旅費等を次年度使用することとした。
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