2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後関西における子どもと教師の学びの循環‐西田秀雄による絵日記指導を中心に‐
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19K02397
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
勅使河原 君江 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60298247)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 絵日記指導 / 童誌雑誌『きりん』 / 西田秀雄 / 図画工作科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は戦後間もない1950年代に京都の小学校教諭・西田秀雄によって行われていた絵日記指導の資料収集とその分析を行うとともに絵日記を書いていた人々への取材を通して、絵日記指導の活動で教師と子供の間でどのように学びが循環し、深まっていたのかを読み解くことを目指す。 研究実施計画に基づき3年間の研究期間中に次の五つの課題に取り組む。(1)第一次資料として当時作成された絵日記資料の収集とそのデジタルアーカイブ化 (2)西田が絵日記指導の際に使用していた童詩雑誌『きりん』(1940年代から1970年代まで発行されていた子供の詩や絵画作品、綴方を掲載した雑誌。本研究では関西地方で出版されていた1960年代はじめまでの号を取り扱う)の資料収集 (3)(1)で収集した資料をデジタルアーカイブ化した絵日記資料の内容分析 (4)絵日記の作者への取材 (5)収集した絵日記や取材内容をもとに、絵日記指導を通した子供と教師の学びの循環の仕組みの解明とその交流の中で培われた学びの深さとその意味について明らかにする。1年目は先にあげた研究課題の(1)と(2)の資料収集と整理を行った。2年目に(3)資料の分析と(4)取材活動を行い、3年目に(5)収集整理した資料の分析と取材を総合した考察を行い、導きだされた研究成果の発表を予定している。本年度は、資料収集と整理を行い戦後間もない時期に残された絵日記資料から、子供の目線で当時の生活を絵日記に記し、それに教師が赤ペンで呼応し、学びを深めている姿を確認することができた。今後、整理した資料をより詳細に分析することによって、絵日記を通して子供と教師が交流しながら新しい時代の文化と教育をいかに創造していこうとしていたかを探っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでの西田秀雄研究の蓄積をふまえ、西田が行った絵日記指導活動に注目し、主にその第一次資料の収集とその整理に取り組んだ。(1)作者からお借りした絵日記の全ページのスキャニングとデジタル化をほぼ終了した。また(2)『きりん』の第一次資料収集を行い、表紙絵や挿絵等の作者のリスト作成も終了した。 絵日記の整理と『きりん』の掲載児童のリスト作成を行なったことで、絵日記が制作されたのと同時期に同じ作者が制作した数多くの詩や絵画作品が『きりん』に掲載されていたことがわかった。また、絵日記中には子供が綴方や絵といった多様な表現方法で日常生活を表そうとする姿があり、共に学校生活を過ごした教師による赤ペンによる数多くのコメントが記されていることがわかった。次年度以降は、資料調査によって見出された子供と教師が共に学ぶ姿をより詳細に分析していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、絵日記と『きりん』の資料整理を行うことで、絵日記が描かれたのと同時期に同じ作者による詩や絵画作品が『きりん』にも数多くの掲載されていることがわかった。次年度の課題としては、デジタルアーカイブ化した絵日記資料の内容分析とともに絵日記の作者による詩や絵画作品が『きりん』に掲載された号とページ等のリストの作成と照合も追加して行う。これらの資料整理を行ったのち、絵日記活動と『きりん』に掲載された作品の創作活動を総合的に検討していく。また絵日記の作者へ絵日記や『きりん』に掲載された詩や絵画作品に関する取材を行い、それらの創作活動の関連性を明らかにしていきたい。 次年度以降、次の3つの観点で考察を試みる 1,絵日記に記されている子供の文章や絵とそれに呼応する教師の赤ペンの記述のやり取りに注目した考察 2,『きりん』に掲載されている詩や絵の制作活動と絵日記活動との関連性についての考察 3,絵日記の作者へ取材を行い、子供と教師が共に取り組んだ絵日記活動や『きりん』への詩や絵の掲載がどのように子供の創造性の育成に寄与したかの考察 これらの研究過程を経て最終年度は、絵日記活動における子供と教師のどのような学びの交流が子供の創造的意欲を高め、学びの質を深めたかの解明を本研究の総括としていく。
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