2019 Fiscal Year Research-status Report
Transformation of paideia in the educational theory of Marsilio Ficino
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19K02405
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
加藤 守通 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (40214407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィチーノ / プレトン / ヴェルジェリオ / プラトニズム / ルネサンス哲学 / ビザンティン哲学 / フィレンツェ |
Outline of Annual Research Achievements |
フィチーノのプラトニズムに影響を与えたゲミストス・プレトンについて調査した。ルネサンスにおけるギリシャ語研究は、ビザンチンの碩学クリソロラスの影響のもとで生まれた。しかし、クリソロラスの影響下にあった初期ヒューマニストたちにおいては、プラトンに対する関心はさほど強くなかった。イタリアをはじめとして西ヨーロッパにおいてプラトンが再評価されたきっかけを作ったのが、コンスタンティノポリス生まれの哲学者ゲミストス・プレトンであった。プレトンは、1438-39年にフェッラーラとフィレンツェで開催された、東西教会の融合をテーマとした公会議に出席した。そこで彼はイタリアの人文主義者たちに出会い、プラトンに関する一連の講義を行なった。また1439年にフィレンツェで執筆された著作、『プラトンに対するアリストテレスの相違について』は、当時西ヨーロッパで知られていなかったプラトンに対する関心を喚起することに寄与した。1490年頃に書かれたフィチーノの回想によれば、プレトンの講義に触発されて、コジーモ・デ・メディチはそれから20年後にフィレンツェにプラトン・アカデミーを設立し、プラトンの全著作の翻訳をフィチーノに依頼した。ルネサンスにおけるプラトニズムはこのようにして成立したのである。 本研究は、プレトン研究の中でも比較的新しいモノグラフィー、Voltech Hladky著のThe Philosophy of Gemistos Plethon, 2014, London: Routledgeを精読し、そこで紹介された個別の研究・資料に目を通すことで、研究を進めた。この研究書は、プレトンをプラトニズムの視点から包括的に捉えることを目指しており、本研究の趣旨にもっとも近いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナヴィールスのためヨーロッパでの原典調査が実行できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を引き継ぐと同時に、フィチーノと当時の人文主義の関係について考察する。 フィチーノ自身、古代ギリシャ・ローマの言語に関する研鑽を積んだ人文主義者であった。彼の思想は、ジャンノッツォ・マネッティやアルベルティといったフィレンツェ人文主義者の影響を多大に受けている。マネッティに関しては、人間の尊厳に関する彼の論考と『プラトン神学』におけるフィチーノの人間論との繋がりがすでにジェンティーレらによって指摘されている。またアルベルティの『絵画論』における数学の重視は、プラトニズムの影響を示唆するものである。彼らの活動した時代は、プレトンのフィレンツェ訪問の時期(1438-39年)と重なるが、彼らの思想はプレトンの影響を受けたのだろうか、あるいはプレトンとは別に独自の発展をしたのだろうか。この点を明らかにすることは、フィチーノにおけるプラトニズムと人文主義の関係を理解するために重要である。(興味深いことに『絵画論』はプレトン来訪以前の1435年に執筆が始まり、1450年に刊行されている。)フィレンツェ人文主義の存在は、フィチーノのプラトニズムがビザンチンのプラトニズムの亜流にとどまらず、人間の尊厳を中核に添えた、近代にも繋がる人文主義に発展していく契機になったと思われる。マネッティとアルベルティの研究は、この仮説の実証に必要不可欠なものである。
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Causes of Carryover |
新型コロナヴィールスのため調査旅行ができなかったため。 使用計画としては、2021年2月にソウルで開催されるAsian Link of Philosophy of Educationへの参加費用に当てたい。
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