2020 Fiscal Year Research-status Report
Transformation of paideia in the educational theory of Marsilio Ficino
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19K02405
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 守通 東北大学, 教育学研究科, 名誉教授 (40214407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マネッティ / アルベルティ / ゲミストス・プレトン / フィチーノ / プラトン主義 / 芸術論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、フィチーノの人間観に多大な影響を与えたジャンノッツォ・マネッティと絵画論を通じてフィチーノの芸術論に影響を与えたアルベルティという二人のフィレンツェ出身の人文主義者たちの著作を研究し、それらがフィチーノの思想形成に与えた影響を考察した。 フィレンツェ人文主義の影響を多大に受けているマネッティに関しては、人間の尊厳に関する彼の論考と『プラトン神学』におけるフィチーノの人間論との繋がりがすでに多くの研究者によって指摘されている。またアルベルティの『絵画論』における数学の重視は、プラトニズムの影響を示唆するものである。彼らの活動した時代は、ビザンティンの碩学にしてプラトン研究者である、ゲミストス・プレトンのフィレンツェ訪問の時期(1438-39年)と重なるが、彼らの思想はプレトンの影響を受けたのだろうか、あるいはプレトンとは別に独自の発展をしたのだろうか。この点を明らかにすることは、フィチーノにおけるプラトニズムと人文主義の関係を理解するために重要である。 マネッティに関しては、彼の人間の尊厳論にはプレトンと共通する部分があるとはいえ、それはそれ以前のイタリア人文主義の伝統の枠組みで解釈することができ、無理にプレトンと結び付ける必要は見つからなかった。それに対して、アルベルティの『絵画論』は、プレトン来訪以前の1435年に執筆が始まったことからわかるように、プレトンの影響下で構想されたものではない。しかし、1450年に刊行されるまでの間に、プレトンを通じてプラトン的な数学理論を取り入れた可能性は高いという結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外での調査ができないなか、文献の解読に集中し、一定の成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、それまでの研究成果を前提として、フィチーノの『プラトン神学』『饗宴注解』『パイドロス注解』『書簡』そしてプラトンの翻訳を取り上げ、「人間」「愛」「美」「芸術」に関する彼の思想を明らかにし、その人間形成論的意義を考察する。なお、海外調査の見込みが依然として立たない中、iPad Proの購入などハード面での体制をより充実させる。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で計画していた海外での調査と国内での学会出席がキャンセルされたため、予算の内「旅費」が執行できなくなった。余った予算は、次年度以降海外への渡航が解除されたのちに速やかに執行する予定である。
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