2023 Fiscal Year Annual Research Report
Transformation of paideia in the educational theory of Marsilio Ficino
Project/Area Number |
19K02405
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 守通 東北大学, 教育学研究科, 名誉教授 (40214407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マルシリオ・フィチーノ / 人文主義教育 / ルネサンス / プラトン主義 / げミストス・プレトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代ギリシャのパイデイアと近代的人間形成論の交差点としてのフィチーノ哲学を美と芸術に焦点を当てて解明す流ことを目指した。本研究は、古代ギリシャから近代に続く、パイデイア、フマニタス、ビルドゥンクといった言葉で代表される、人間形成論の源流の中でフィチーノが重要な位置を占めているという問題意識に担われている。したがって、単に一思想家としてのフィチーノの言説の教育学的吟味ではなく、古代と近代の教育思想の分水嶺としてフィチーノの言説を読み解くことを目指している。その際、フィチーノの言説は、単に哲学史の文脈においてのみならず、美術史の文脈においても考察される。 2019年度には、フィチーノのプラトニズムの歴史的背景について調査した。具体的には、フィチーノに直接的な影響を与えたゲミストス・プレトンの諸著作を精読す ることによって、このビザンチン出身のプラトニストがどのような思想を持っていたかを明 らかにした。 2020年度には、前年度の研究を引き継ぐと同時に、フィチーノと当時の人文主義の関係について考察がなされた。 2021年度には、前年度までの研究成果を前提として、フィチーノの思想そのものの解明に取り組んだ。具体的には、『プラトン神学』『饗宴注 解』『パイドロス注解』『書簡』そしてプラトンの翻訳といったフィチーノの諸著作の読解を通じて、「人間」「愛」「美」「芸 術」といった概念をはっきりと浮き彫りにさせ、それらに内在する教育的意義を明らかにす るよう務努めた。 2022年度には、プラトン・アカデミーへの参加を通じてフィチーノのプラトニズムの 影響を強く受けた思想家や芸術家の言説と作品に焦点を当て、フィチーノのプラトニズムが 通俗化され、文化全体に拡散されていった過程を調査した。
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