2021 Fiscal Year Research-status Report
三田谷啓による母の会事業と児童保護―地域史の視点から―
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19K02409
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
志村 聡子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (50406609)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 三田谷啓 / 母の会 / 三田谷治療教育院 / 入院児名簿 |
Outline of Annual Research Achievements |
三田谷啓(さんだやひらく、1881-1962)は、三田谷治療教育院(兵庫県芦屋市)を設立したことで知られる医師・教育家である。交付申請書においては、各年度において地域の「母の会」を調査する予定であったが、コロナ禍により研究計画において大きな修正を余儀なくされている。2021年度も移動に制限があり、資料閲覧のための三田谷治療教育院への訪問機会は限られた。しかし、所蔵資料を活用し、教育史学会(オンライン)において「三田谷治療教育院「入院児」に関する考察―「母の会」との関連から―」と題し、研究発表をすることができた。 用いた資料は、三田谷治療教育院所蔵の『入院児名簿(一)三田谷治療教育院』(昭和2年8月入院~昭和11年8月入院)、『昭和八年七月末日現在 日本母の会々員名簿 日本母の会本部』、『昭和九年九月現在 大阪母の会々員名簿』である。それらの情報をエクセルファイルに入力した上、適宜照合し、入院児の母親の「母の会」加入状況を確認した。入院児と母親をつなぐ判断基準は、姓と住所の一致によった。なお、「母の会名簿」に会員の記載があった「母の会」は、大阪母の会、甲陽母の会、播磨母の会、奈良母の会、堺母の会、阪南母の会、高田母の会、神戸母の会、呉母の会で、「母の会」加入状況の検証はこれら計9団体の範囲に限られた。 母親の氏名が母の会名簿に記載のあった家族が、19家族あった。母の会会員19名中7名が、大阪母の会に属していた。神戸母の会が3名、奈良母の会が2名、甲陽母の会が2名、阪南母の会が2名、堺母の会が2名、呉母の会が1名であった。『入院児名簿(一)』記載の延べ388名中38名は、その母親が母の会会員として活動実績があったとも言える。子どもの同院入院において、母親が母の会会員であることが要件とはされていなかったと考えられた。三田谷治療教育院と母の会事業との関連として、貴重な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で活動に制限はあるが、研究課題の周辺で知っておくべき知識などを学習することができ、研究対象に対する理解を深めることができている。当初の研究計画を実施することは難しいため、三田谷啓の母の会事業を当初と異なる角度から研究する視点を得ることができている。ただ、当初の研究計画に鑑みると、遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に研究発表した内容を、論文として投稿し、公刊を目指す。さらに、新たな視点で作業を行い、成果を出す。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍で研究活動を行うことができなかったため、次年度に繰り越しを行った。2021年度に適宜執行し、研究を進めることができた。
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Research Products
(1 results)