2022 Fiscal Year Annual Research Report
明治期の地域社会における公教育制度の展開と天皇権威の受容に関する実証的研究
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19K02411
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
鈴木 敦史 東海大学, 海洋学部, 准教授 (40645305)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域教育 / 置賜地方 / 東置賜郡 / 地方名望家 / 豪商 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで行ってきた、天皇巡幸を契機とする天皇権威の地域社会における受容について、山形県の置賜地方の特徴を庄内地方との比較のなかで把握し、公立学校と地域社会の人々の動向を三島通庸の県政運営との政治的距離感に配慮しながら検討した。さらに、本研究が当初想定した南置賜郡という地域設定を再検討し、南置賜郡と東置賜郡を含んだ置賜地方という拡大した視点で検討することで、そこに属する各地域相互の特徴を際立たせることにした。また本年度は、昨年度より取り組んでいる当地の新聞メディアの動向を更に精緻に検討することで、行政の施策により広められる天皇の権威が地域の学校や人々に受容される過程を、より受け手の側から把握することに努めた。 こうした検討を通じて明らかになったのは、県令である三島通庸が地域社会の急速な近代化を進めるなかで、当初より人々から不信感を抱かれていた地域の豪商たちが天皇の受け入れに向けた準備を主導し、そこで人々も「不都合なき」受け入れを実現すべく協働する過程を通じて、地域社会を構成する一因としての自覚を強めていったことである。またそうした中で地域の学校は、天皇の訪問を受け入れる中心的な場として機能し、また天皇への立礼の実践などを通じて、人々が天皇の権威を受容していく素地を形成していったことが分かった。 加えて、置賜地方の地域的特徴については、東置賜郡の中心地である高畠の検討を通じて、学校を支える地域社会が、三島通庸の県政運営との政治的距離感を縮めていく中で、学校の建築をはじめとする地域の近代化が進み、それが巡幸における天皇訪問へのより主体的な対応にもつながり得たことが示唆できた。 これらの成果については、一部事実関係の確認が研究期間内に公開できる論文の投稿期日内に行えなかったこともあり、今年度中の公開を断念せざるを得なかったが、研究期間終了後に早急に公開する予定である。
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