2020 Fiscal Year Research-status Report
教師の子ども理解・授業の見方の深化を促す授業研究の方法論に関する研究
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19K02418
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
杉本 憲子 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (70344827)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 授業研究 / 教師 / 自己変革 / 子ども理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教師の子ども理解・授業の見方の深化を図る授業研究の方法について、上田薫の授業研究論と研究方法ならびにその実践的展開に着目して明らかにするものである。本年度は、以下の点を中心に研究を進めた。 第1には、上田薫の授業研究論に基づく研究方法としての「カルテ」に着目し、その理論的検討と実践的展開について考察を進めた。カルテの実践哲学を理解する上で、上田の動的相対主義の理論における人間(教師)とその成長・変容、客観性等に関するとらえ方の検討が必要であることが明らかとなった。実践的展開の面では、静岡市立安東小学校の授業研究に関わる著書・論文、ならびに社会科の初志をつらぬく会の機関誌『考える子ども』において実践者の立場からカルテについて論じられているものの収集・整理を行い、その意義を考察する視点を検討した。 第2には、子ども理解に重点を置いて授業を実践・省察する授業研究において、授業記録を中心とした記録・資料のもつ役割について検討し、論文としてまとめた。授業の事実にもとづく授業研究は、当該授業の改善だけでなく、教師が自分の実践に立脚して自律的に進んでいくこと、立場や経験の違いによらず、協力して研究し合う関係づくりを促す側面をもつ。一方で、授業記録にもとづく考察の難しさについて、記録の持つ特質から検討した。それらを踏まえて、子ども理解や教師の見方の深化を図るために、授業を分析する上での方向性や課題について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カルテに着目した上田薫の授業研究の方法とその実践哲学についての検討や、子ども理解に重点を置いた授業研究における記録の役割についての考察を進めることができた。研究方法の実践的展開については、カルテや座席表等を活用した授業研究がどのように展開されたか、教師の成長・自己変革がどのように促されたかを明らかにするという点から、それらを位置づけた実践にもとづく授業研究会への参加や実践研究に携わった教員へのインタビュー調査の実施を含めて計画した。しかし本年度は出張等による調査が困難であったこともあり、文献・資料等を中心に考察をおこない、この点に関する研究は十分には進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本年度までの研究を通して考察された上田薫の授業研究論とカルテ等にみる研究方法の特質の視点から、その基盤となる理論について検討を進め、上田が人間(教師)とその成長・自己変革をどのようにとらえたかという点を含めて考察し、研究成果としてまとめる。 2)学校の実践研究の記録・資料の考察やカルテ等を活用して実践に取り組んできた教員への調査を通して、実際の授業研究を通して教師の子ども理解・授業の見方の深化や教師の成長・自己変革がどのように展開されるか、またどのような課題を有しているかという点について研究をおこなう。研究方法については、次年度の状況を踏まえて必要な見直しを図りながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、本研究課題との関連で参加を予定していた学会や研究会がオンラインで実施されたことや、感染拡大防止の観点から出張による調査研究が困難となり、文献・資料等での研究を中心におこなったことから、旅費に残額が生じたことが挙げられる。次年度も同様の状況が生じる可能性があるので、実践的展開に関する研究については、調査の方法を検討するとともに、文献・資料等の整理・分析等を効果的におこない、研究課題に対する成果が得られるよう研究費を有効に活用して研究を進める。
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