2020 Fiscal Year Research-status Report
現代政治教育とナチス期無名市民のマイノリティ救援-包摂・協働・自律-
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19K02419
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡 典子 筑波大学, 人間系, 教授 (20315021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 孝夫 淑徳大学, 人文学部, 教授 (70211779)
對馬 達雄 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (90004118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナチス期ドイツ / 抵抗市民 / マイノリティ救援 / 現代的意義 / 政治教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年のドイツで重視される「ナチス期抵抗市民」を題材とした指導に着目し、過酷な時代にあっても自らの意志を貫いた民衆の姿が政治教育の教材としていかなる意味をもつかを検証することである。 令和2年度は、本研究のテーマに関わる3冊の著作を刊行した。研究代表者である岡の著書「ナチスに抗った障害者」では、ナチス期抵抗市民のなかでも特に弱い立場にあった障害者が、自身よりもさらに弱い立場におかれたユダヤ人を救援した歴史的事実を検証した。さらに、こうした事実が今なぜ現代ドイツで着目されているのかを指摘することで、歴史的事実が現代の人々に対してもつ意味の一端を明らかにした。一方、研究分担者・對馬の著書「ヒトラーの脱走兵」は、歴史認識が時代とともにいかに変化していったかを検証するとともに、研究者が政治に対して担う役割にも言及したものである。また、研究分担者・遠藤が編者のひとりとして参加した「シュタイナー教育100年」では、同調圧力に屈せず自律的に事を決する判断力の育成の重要性が改めて示されている。 こうした成果を踏まえ、9月開催の教育史学会第64回大会において前年度に続き2度目のコロキウム「ドイツ現代史と人間」を開催し、教育学分野の研究者と広く意見交換を行った。当日は、前年度に報告を行った本科研費のメンバー3名に加え、名古屋大学・江頭智宏氏にも難民問題を研究する立場から報告を行っていただいた。これにより、ドイツにおける迫害・被迫害問題と政治教育の関係について、さらに視野を拡大することができた。フロアからは、学校教育にとどまらず、現代の社会・政治情勢等と結びついた関心・指摘が数多くなされ、本研究がもつ幅広い展開の可能性を認識する好機となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3冊の書籍を刊行し、研究成果を広く社会に還元することができた。また、令和2年度に続いて学会コロキウムを開催し、本研究がもつ学術的・社会的意義について広く研究者間で情報共有することができた。資料収集、分析作業についてもきわめて順調に進んでいる。 なお、「(1)当初の計画以上に進展している」を選択しなかった理由は、新型コロナの蔓延により、ドイツでの現地調査が実施できなかったことによる。ただし、日本国内で実施できる作業については次年度分も先取りするかたちで実施してきていることから、作業全体としては大きな遅れを懸念する状況ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
日本国内で実施できる作業については、順調に推移しており、変更の必要はないと考える。現地調査については、日独両国の新型コロナウィルス蔓延の状況に鑑み、実施困難である場合には、現地の研究協力者とも相談しながら一部実施方法の変更も検討する。
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Causes of Carryover |
年度当初の時点では研究者3名全員が海外での調査を予定していたが、新型コロナの影響で実現できなかった。また、国内での打ち合わせや学会発表についてもオンラインでの実施・参加となったため、旅費として予定していた金額の大半を次年度使用額として計上することとした。 次年度については、可能であれば調査旅費として使用したいが、渡航調査が困難となった場合には、資料購入費や海外研究協力者への謝金としての使途に変更することを検討している。
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Research Products
(4 results)