2023 Fiscal Year Research-status Report
現代政治教育とナチス期無名市民のマイノリティ救援-包摂・協働・自律-
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19K02419
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡 典子 筑波大学, 人間系, 教授 (20315021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 孝夫 淑徳大学, 人文学部, 教授 (70211779)
對馬 達雄 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (90004118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ユダヤ人救援活動 / 現代的意義 / 市民的勇気 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、これまで分析を進めてきた成果をもとに、2冊の書籍を刊行した。1冊は、研究代表者の岡による単著「沈黙の勇者たち-ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い-」である。当該の書籍は全4章から成り、ユダヤ人とドイツ人救援者を取り巻く各時期の社会状況、救援者の属性、活動の動機、活動の具体事例、救援者間の人間関係から戦後の評価までを含む包括的な内容である。刊行後、当該書籍は新聞各紙やラジオ等で広く取り上げられたほか、SNSを通じて一般読者からも反響を得た。寄せられた反響のなかには、当該のテーマが現代社会、とりわけ現代の日本にとっていかなる意味をもつかに言及したものも多く、今後は寄せられた反響を改めて分析することで、当該の課題がもつ現代的意義についてもより詳細に明らかにできると考えている。もう1冊は、研究分担者の遠藤による単著「ドイツ現代史とシュタイナー学校の闘い」である。全4章から成り、教育の自由と自律を求めたシュタイナー学校が、ナチスの弾圧からいかに生徒たちを守ろうとしたか、またその教育に対する戦後評価がいかなるものであったかを明らかにしている。 さらに今年度は、ナチス期無名市民の行動が現代日本の学校教育や幼児教育においてどのような意味をもつかを明らかにするため、大学生を対象として予備調査を行った。結果については現在分析中であるが、「市民的勇気」の語に象徴されるかつてのドイツ無名市民の行動は、日本の学生にとっても本質を捉えやすい内容であり、十分に教材化の価値があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作業成果を書籍のかたちで公表できたという点では、順調に進んでいるといえる。また、当該課題がもつ現代的意義についても、日本国内においてではあるが調査を開始できたことは、令和5年度の大きな成果である。研究に必要となる文献も概ね収集を終えることができ、この点でも予定どおりの進捗状況といえる。最終年度に向けて、研究全体をいかに総括するかが今後の重要課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は比較的順調に研究を進めることができたものの、研究計画全体からみると、新型コロナの影響による遅延を完全に解消するまでには至らず、さらに1年の期間延長を申請した。最終年度となる令和6年度は、可能であればドイツでの現地調査を実施するとともに、日本国内での意識調査をさらに進展させ、最終的な研究のまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定していたドイツでの現地調査が公務等の都合で実施できなかったためである。ただし、この間新たな文献の購入が追加で必要となったため、外国旅費として予定していた金額の一部を物品購入に充当した。 次年度は、残額を国内での調査旅費および書籍購入にあてる予定である。
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