2021 Fiscal Year Research-status Report
学校教育と社会教育をつなぐ学習内容と史的展開に関する研究
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19K02428
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
板橋 孝幸 奈良教育大学, 学校教育講座, 教授 (00447210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 郷土教育 / 青年期教育 / 植民地教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、青年期と植民地における郷土教育に着目して学習内容と史的展開について検討した。戦前の青年期教育は、中学校教育を享受できた者は支配層に、享受できなかった多くの農民子弟は農業補習学校に収容されて非支配層を形成してきたと先行研究でその二重性が指摘されてきた。しかし、「農村幹部」養成として旧制中学校が機能したところもあったが、正規中等学校の卒業生だけで地域のリーダー層を養成していたわけではなく、村独自の取り組みもみられた。中等学園を設置して「準中等」教育を施す機会を確保した地域、全村学校を用いて「鍬頭」層の教育をした地域などがあり、こうした「学校」で学んだ青年たちは中学校卒業生のような支配的地位を獲得できる層ではなかったが、地域における後継者として期待されていた。そうした中で、小学校と青年期の教育を接続させるべく郷土教育のカリキュラムが構築されていった。 植民地における郷土教育については、台湾を事例に検討した。植民地台湾では、内地出身者には台湾の理解を深めて自分の郷土であるとの意識を持たせること、台湾出身者には同情や尊敬の念を持ちつつ導くことでアイデンティティの形成を押さえ、同化を進めて愛国心を育成することが課題となっていた。郷土教育における中心的な学習内容の1つであった地理学のテキストは、最新の研究成果を盛り込んだ自然地理的内容と台湾を日本の植民地としてとらえさせる人文地理的内容の2つが軸となっていた。さらに、客観的な自然地理的認識の育成とともに、「領台」後の台湾を中心に歴史を記述し、日本人の努力によって発展してきたという植民地としての「特殊性」を理解させ、日本人としての国民的自覚を強固にするねらいを持って作成されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定していた研究計画を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナの影響で、資料収集・聞き取り調査が困難になっている。調査の実施が難しい場合は、これまでに収集した資料を整理して、今後の研究を進めるための資料分析作業を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、一部予定していた調査が難しかったため。次年度調査が可能になり次第、旅費として使用する。
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