2019 Fiscal Year Research-status Report
北欧におけるICTを活用した協働構築型キャリアガイダンス専門人材育成に関する研究
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19K02431
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森田 佐知子 高知大学, 学内共同利用施設等, 特任准教授 (30743091)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キャリア支援 / 北欧 / バルト三国 / ICT / ソーシャルメディア / 協働構築 / co-careering |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,協働構築型(Co-careering)アプローチが北欧及びバルト三国のキャリアガイダンス・プラクティショナー養成カリキュラムに与えるインパクトと,プラクティショナーに求める能力要件を明らかにすることで,日本のキャリア支援専門家育成への示唆を得ることを目的とする。2019年度に実施した研究内容と得られた成果は以下の通りである。 (1)ラトビアにおけるプラクティショナー養成制度を調査した。ラトビアでは2007年に最初のプラクティショナーの職務基準が内閣に承認され、これを基にプラクティショナー養成のための修士号プログラムが開発されるという独自の養成制度を発展させていることが明らかとなった。本プログラムではカウンセリングにおけるIT活用が2年次必修科目として位置づけられ、基礎的なITの利活用はもとより、年齢や社会階層の異なる人々との仮想コミュニケーション能力の向上までを教育目標としていることが明らかとなった。 (2)ユヴァスキュラ大学で開催された専門家研修に参加し、協働構築型アプローチの概要とプラクティショナーが直面している課題を探った。その結果、キャリアガイダンスとカウンセリングにおけるソーシャルメディアの活用は、情報提供、キャリアサービスの提供、協同的キャリア探求、協働構築の4つに分類されるが、協働構築型は非常に複雑であるため、多くのプラクティショナーはより実践的な研究の蓄積と能力開発の機会を求めていることが明らかとなった。またソーシャルメディアを利用したチャットカウンセリングの理論として有名なデンマークの4Cモデルは、日本では普及が進んでいないSkilled Helper理論がベースとなる理論の1つとなっていること、さらに、近年の人工知能(AI)の活用は、プラクティショナーに求める能力要件を大きく変える可能性があり、研究の蓄積が期待されることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者からの助言を受け、本来最終年度に予定していたユヴァスキュラ大学で開催される専門家研修(ICT in Guidance and Counselling)を初年度に参加するよう変更した。このことにより、当初の研究計画から実施順序を大きく変更することとなったが、結果として、本研究の主題である協働構築型(co-careering)アプローチの開発者からその理論を深く学び、かつ、研究・実践上の課題を開発者及び研修に参加していたプラクティショナーとの議論から探ることができたことで、今後の研究の方向性を精緻化することができた。また研修で本研究の調査対象としていたデンマークのeGuidance責任者とのコネクションを構築できたことも、次年度以降の研究遂行につながる成果であった。 さらに上に述べた通り、チャットカウンセリングにおけるSkilled Helper理論の有用性及び日本のキャリアガイダンスへの応用可能性、人工知能(AI)の活用がプラクティショナーに求められる能力要件とその能力開発に与えるインパクトなど、研究計画時には想定していなかった重要な着眼点を得ることができた。このような状況から、当初の計画と実施順序の入れ替わりは発生しているが、研究全体から見て、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、ノルウェー及びリトアニアにおけるプラクティショナー養成制度の調査を完了させる。これまでの調査で、北欧及びバルト三国における養成制度には、学士課程型、修士課程型、大学における特別コース型、大学以外でのトレーニング型の4つの類型があることが明らかになっている。ノルウェーとリトアニアがこの類型のいずれに当てはまり、どのような制度的特徴を持つのかを明らかにするとともに、それぞれの類型における利点と課題を明らかにする。ノルウェーとリトアニアに関しては、それぞれのカリキュラムにおけるICTの利活用に関する知識・スキル習得の位置づけについても合わせて調査を行う。 次に、昨年度の調査で浮かび上がった、ICTやソーシャルメディアを活用したチャットカウンセリングにおけるSkilled Helper理論の有用性と4Cモデルへの展開、日本への応用可能性を検討する。Skilled Helper理論については日本における研究の蓄積が限定的であるため、その理論の特性とキャリアガイダンスへの応用の歴史についても整理しておく。さらに4Cモデルと関連して、AIを活用したオンラインカウンセリングを既に実施している日本の大学に協力を依頼し、担当者へのインタビュー調査を通じて、AIがキャリアガイダンス・プラクティショナーに必要な能力・スキルをどのように変容させるのかを調査したい。 研究を遂行する上での課題として、コロナウィルスの影響により、現地における一次資料の収集が制限される可能性が考えられる。そのため、課題①及び②については、オンラインによる調査、インタビュー等に切り替えることができる部分は切り替え、進めていくこととする。どうしても現地調査が必要な部分については、最終年度にまとめて実施することで対応する。
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Causes of Carryover |
現地調査を効率的に行うことができたため旅費が抑えられた。今後の使用計画を変更するほどの次年度使用額ではないため、次年度以降の計画は変更しない。
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