2020 Fiscal Year Research-status Report
北欧におけるICTを活用した協働構築型キャリアガイダンス専門人材育成に関する研究
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19K02431
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森田 佐知子 高知大学, 学生総合支援センター, 特任准教授 (30743091)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キャリア支援 / キャリアガイダンス / チャットキャリアカウンセリング / 北欧 / ICT / AI / 協働構築 / co-careering |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、協働構築型(co-careering)アプローチが北欧及びバルト三国のキャリアガイダンス・プラクティショナー(以下、「プラクティショナー」と略)養成カリキュラムに与えるインパクトと、プラクティショナーに求める能力要件を明らかにすることで、日本のキャリア支援専門家育成への示唆を得ることを目的としている。2020年度の実施内容と得られた成果は以下の通りである。 (1)2019年度の現地調査で得られた一次資料をもとに、スウェーデンのプラクティショナー養成制度におけるカリキュラム分析を行った。分析の結果、スウェーデンの初期養成カリキュラムにはICT活用に関する内容が組み込まれておらず、先行研究を支持する結果となった。 (2)デンマークのeGuidanceにおける4Cモデルを事例として、チャットを使用したキャリアカウンセリングの課題解決に対するSkilled Helper Model(ジェラード・イーガン)の有効性を分析した。分析の結果、Skilled Helper Modelは、チャットを活用したキャリアカウンセリングの課題である、少ない情報量でのクライアントのアセスメントと相談動機が曖昧なクライアントへの対応、の2点いずれにも有効であり、中でも、援助契約、焦点化、継続的な評価、の3つを取り入れることでこれらの課題の解決につながることが示唆された。 (3)人工知能(AI)の台頭がプラクティショナーの能力要件に与える影響を探るため、日本の学生を対象としたアンケート調査を実施し、その内容を分析した。調査の結果、AIを使ったキャリアカウンセリングは学生から概ね賛同を得られた一方で、AIを使った採用選考には大きな抵抗が見られた。このことから、プラクティショナーはキャリアガイダンスの中で、企業等の採用選考におけるAI活用の実態や対応策などについて指導する力が求められることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定していた北欧等での現地調査を実施することができなかった。しかし2019年度に、2020年度と2021年度に予定していた現地調査の一部も前倒しで実施していたため、本年度は主に2019年度に実施した現地調査の分析と現地調査で新たに見えた課題の分析を行った。具体的には、チャットカウンセリングにおけるSkilled Helper Modelの有用性及び日本のキャリアガイダンスへの応用可能性と、AIの活用がプラクティショナーに求められる能力要件とその能力開発に与えるインパクト、という2つの研究計画時には想定していなかった重要な着眼点についての分析である。本年度はこの2点に焦点を絞り、日本において分析作業や学生の意識調査などを進めた。 また、各国のプラクティショナー養成制度および養成制度におけるICT・ソーシャルメディアを活用した指導の位置づけの調査については、文献資料の分析を行い、不明点についてはメール等を活用したインタビュー調査を行うことで代替している。 以上のことから、当初の計画と実施順序の入れ替わりや手段の変更は発生しているが、研究全体から見て、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2021年度は、主に以下の3点を実施する。 1点目は、ICTを活用した協働構築型キャリアガイダンスで必要となる能力資質開発の具体的な方法を明らかにすることである。これまでの調査で、上記の能力資質はある特定のスキルセットではなく、プラクティショナーの認知、態度、スキル、そして倫理的な要素を含めた組合せであることが示唆されている。このように複雑な能力資質をどのように習得していくのかを明らかにしたい。この課題は北欧等での現地調査を予定しているが、新型コロナウイルス感染拡大状況により変更の可能性もあり得る。 2点目は、ICTを活用したキャリアガイダンスにおける倫理的課題とその対応を考察することである。これは特に現場のプラクティショナーが直面している大きな課題であると考えられる。この点について北欧諸国のガイダンス政策やプラクティショナーの倫理ガイドラインの分析から明らかにしたい。 3点目は、本研究の研究成果の公開である。本年度、日本におけるキャリアガイダンスも対面を中心とした実施形式からICTを活用したオンラインによる実施へと大きく移行した。新たなキャリアガイダンスのあり方を現場で模索している日本のプラクティショナーに本研究の成果を提供するため、研究成果を単著としてまとめ出版する予定である。本年度後半はその作業に取りかかり、年度内の出版を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年度に予定していた北欧、バルト三国における現地調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じている。現地調査は次年度にまとめて実施する予定である。次年度の状況については予測が難しいが、もし次年度も現地調査が実施できなかった場合は、調査方法の変更や成果公開のための書籍出版、プラクティショナー向け研修プログラムの試験的開発等を行う予定である。
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