2019 Fiscal Year Research-status Report
困難を抱えた女性への就労定着支援のためのシステムとネットワーク構築に関する研究
Project/Area Number |
19K02433
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
野依 智子 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40467882)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 就労定着支援 / 労働と生活 / 困難を抱えた女性 / 非正規シングル女性 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、困難を抱えた女性の就労支援ならびに就労定着のためのシステムとネットワークを構築することを目的としている。2019年度は、困難を抱えた女性たちが求めている支援を明らかにするため、以下のフィールド調査を行った。 (1)横浜市男女共同参画推進協会主催「仕事とくらしのセーフティ講座-パート・派遣・契約で働くシングルのあなたに」(以下、非正規シングル講座)の参与観察を行った。第4回「正社員を目指す」の講座では、「正社員をめざしているわけではない。雇用にそれほど期待していない。気持ちよく働きたい」「パートでいいから無期で働きたい」という受講生の声を聴いて、正規・非正規であることよりも安心できる職場環境(人間関係も含めて)で長期で働きたいと願っていることがわかった。 (2)加賀市就労支援事業「こっとりとKAGA」の参与観察を行った。こっとりとKAGAは、大阪豊中市の女性団体が受託した事業である。シングルマザーなど困難を抱えて生活している女性を対象に、人手不足に悩む加賀市に移住して就労と生活を立て直そうという趣旨で始まった。しかし、実際には非正規を繰り返している若年女性や何らかの理由で大阪や地元を離れたいシングル女性が、移住して生活を立て直すこと(ライフプランを作成する)から就労につなげる事例である。現時点で、20代シングル女性3名(正社員)、40代シングル女性1名(パート)が就労自立をしている。移住に際しては、女性団体が借り上げた家をシェア・ハウスとして活用している。現在は、20代1名と40代1名とでシェアしている。このシャア・ハウスには地元で採用した就労支援者が常勤し、必要に応じて女性団体のキャリア・カウンセラーが宿泊しており、サポート体制は充実している。 以上から、改めて生活と労働は一体であることが重要であること、また安心できる環境で長期で働けることが重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、講座「仕事とくらしのセーフティ講座-パート・派遣・契約で働くシングルのあなたに」と「こっとりとKAGA」事業の参与観察で、困難を抱えた女性たちが望んでいる支援は何か、また、どのような支援を行っているのかを調査できればよいと考えていたが、こっとりとKAGAでは、この1年ほどで実際に4名が就労自立でき、その4名にインタビューを実施することができた。そのことによって、加賀市に移住してくるまでにどのような支援が必要なのか、つまり、大阪での就労支援団体や女性団体と加賀市での事業拠点との連携が重要であること、生活を立て直すことから就労への見通しや意欲も生まれてくること、生活と労働は一体であることなどが明らかになった。 以上から、本研究の目的である困難を抱えた女性への就労支援にむけたシステム構築、ネットワーク構築のための重要な知見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目の今年度は、新型コロナウイルス感染症の対応のため、なんらか変更が生じる可能性があるが、現時点での推進方策は、以下の通りである。 (1)横浜市男女共同参画推進協会主催「仕事とくらしのセーフティ講座-パート・派遣・契約で働くシングルのあなたに」講座の参与観察を引き続き予定している。今年度は、内容をリニューアルするとのことであるから、講座担当者と密に連絡を取りながら、参与観察を進めたい。また、参与観察も3年目に入るため、可能であれば受講生へのインタビューも実施したい。 (2)加賀市就労支援事業「こっとりとKAGA」についても、引き続き、移住による就労体験の参与観察を行う。今年度は、就労体験を受け入れている事業所にもインタビューを実施したい。また、就労自立した4名のパネル調査として半年後・1年後のインタビューも行い、労働と生活の一体支援についてさらに深めたい。さらに、この4名のうちの40代の女性は、被支援者でありながらシェア・ハウスに入居してきた女性の生活支援の役割も持っている。彼女の存在が、支援システムの中でどのような意義を持つかを具体的に分析したい。 (3)さらに、北九州のNPO抱ボクが行っている家族marugoto支援など、計画に挙げている他の事例についても調査する。 以上、2020年度も2つのフィールドを対象に調査分析を勧めたい。
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Causes of Carryover |
本研究の準備段階として、2018年秋に全国の男女共同参画推進センター380か所に就労支援の相談窓口の設置の有無についてアンケートを取った。2019年度は、相談窓口がある男女共同参画推進センターに2次調査を行う予定であったが、質問項目がまとまらずに実施できなかった。現在進行中の事例調査の分析を通して、質問項目を精査していきたい。
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Research Products
(3 results)