2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K02438
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
伊藤 実歩子 立教大学, 文学部, 教授 (30411846)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マトゥーラ / アビトゥーア / オーストリア / ドイツ / コンピテンシー / PISA / 大学入試 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年4月から7月にかけては、2020年8月に出版した編著『変動する大学入試――資格か選抜か ヨーロッパと日本』(大修館書店)の反響が大きく、それに関連して依頼された論文執筆や学会発表を中心に取り組んだ。加えて、オーストリアの中等教育修了資格試験において、課題論文が必修化されたことから、ドイツ語圏の探究学習に関する理論の整理および実践の検討を行った。以上の内容については、以下のように成果を公表した。 第一に、マトゥーラ改革において必修化された探求型学習(課題論文)の評価方法を含む課題の批判的検討、第二に、ドイツ語マトゥーラにおけるコンピテンシーと文学の関係についての批判的検討。以上は、コンピテンシーに基づく教育改革が全教育課程を通じて進められていることを批判的に検討したもので、これまでの研究の蓄積と合わせると、初等から後期中等教育修了資格までのオーストリアにおける教育改革の全容を把握したことになる。 第三に、第一の成果とも関連して、初等教育における探究的な学習の問題と新しい実践の検討を行った。探究学習は、日本だけでなく、オーストリアを含むEU全体でも推進が強化されていることが明らかになった。 また、2021年8月から1年間、立教大学の海外研究制度を利用して、ウィーン大学教育学研究科に客員研究員として滞在している。この間に、資料収集や論文執筆のほかに、学校教育関係者、大学関係者へのインタビューや意見交換などを行った。これらは今後2022年8月まで継続して行う予定である。 なお、今回の調査では、大学入試(高大接続)に焦点を当てながらも、そこへ至るまでの学校間接続にも調査、研究を発展させ、今後の研究の展望を得ることにも注力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年8月よりオーストリアに滞在していることによって、研究はおおむね順調に進んでいる。本年度に予定した論文や発表はほぼ成果を公表することができた。 ただし、コロナ禍のために、オーストリアにおいても、自由に学校訪問ができなかったり、欧州内の往来などが制限されていたこともあって、計画以上に進展しているとまではいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年8月までのオーストリア滞在中に、学校関係者インタビューや学校訪問、授業観察、あるいは教育学研究者との意見交換なども行いたい。また、日本からの海外渡航がいまだに困難であるため、この滞在中に、ドイツ語圏を含め、欧州内(フランス、ドイツなど)の教育学者らとも、大学入試(高大接続)に関連付けながらもより広いテーマ(例えば、コロナ禍の学校教育)で意見交換を行いたいと考えている。大学入試という研究テーマは、研究代表者がこれまでに行ってきた初等・中等教育の研究成果と総合して検討する必要があると考えるからである。 これらの成果は、論文や学会発表で発表するだけでなく、Webなども利用してより広く一般にも公開したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナ禍により、欧州内で開催予定の学会や研究会などはすべてオンラインとなり、欧州内移動が当初予定よりも大幅に制限されたためである。ただし、日本からオーストリアへ出国できたことにより、旅費などは前年度に比べれば、順調に使用できたと考えている。 次年度は、コロナの感染状況を注意深く見ながらも、オーストリア国内にとどまらず、欧州内における調査、資料収集なども積極的に行いたいと考えている。
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Research Products
(5 results)