2019 Fiscal Year Research-status Report
北海道における「戦後開拓」下の小学校-地域の形成過程と学校の実態に着目して-
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19K02444
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
坂本 紀子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40374748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 引揚児童 / 引揚者 / 長期欠席児童 / 二部教授 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の敗戦から1950年代を主たる対象時期として、旧植民地からの引揚や「戦後開拓」に着目し、この時期における政府・北海道による「開拓」「開発」政策の変遷をおさえつつ、その下で移住した人びとと小学校の関わりや子どもの実態を明らかにすることを目的としている。先ずは敗戦から1950年頃までを対象に、北海道に移住した引揚者等が子どもたちの学校教育にどのように取り組んだのか、その際、教員はどのような対応をしたのかを明らかにすることを課題とした。 1945年の敗戦により「満州」や「樺太」等の植民地を失った日本にとって北海道は、引揚者や「内地」からの戦災者の受け入れ先として、また食糧増産の拠点として位置づけられた。北海道の人口は、これにより急速に増大するが、移住者の生活基盤の形成そのものが困難を極めた。戦後、人口が激増する北海道では、小学校で二部教授が実施され「長期欠席児童」が増えるという教育問題が生じていた。十分な準備がなされないまますすめられた引揚者の受け入れは、子どもたちの教育問題へと投影されていったのである。本年度においては、都市部(札幌と函館)の「引揚児童」に焦点をあてた。 「引揚児童」たちが厳しい生活環境と蔑視の眼差しの中におかれ、学校に通えず教育を受けられなかったり、労働を余儀なくされ長期欠席をせざるを得なかったりしたことを明らかにした。年齢相当の学年より1学年下げて学校に転入せざるを得なかった児童の例もあった。しかし、このような生活苦の中にあっても分校や学校設立に向けた運動を行い、それをかなえた人びとの例や、子どもの実情をふまえた教育を求め、僅かではあるが、それを実現した人びともいたことを明らかにした。そうした実現は、行政側が準備したものではなく、引揚者自らの力や、それに応えようとした教師の「判断」、「熱意」によって可能になったことも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、戦後北海道の札幌市および函館市を対象に、引揚児童の生活と教育の実態を明らかにしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、「北海道総合開発計画」前期5年(1952年~1956年)を対象時期として、新たに設置された学校の特徴や既存の学校の対応等について、教育の実態を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)