2019 Fiscal Year Research-status Report
Theory of High School Reform: Formation and Development of the High Tech High in the United States
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19K02448
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 悠太 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (20725246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等学校改革 / 学校改革 / 高等学校改革の理論 / 教師の専門性開発 / ハイ・テック・ハイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2000年に開校し現在は世界規模の高等学校改革のネットワークの中心となっている、カリフォルニア州サンディエゴ市ハイ・テック・ハイ(High Tech High)の形成と展開を跡づけることを通して、現代アメリカにおける高等学校改革の理論を解明することを目的とする。ハイ・テック・ハイは、2018年10月現在、6つの高等学校に加え、4つの中学校、4つの小学校と1つの教育学大学院(High Tech High Graduate School of Education)を有する学校開発組織である。 本研究の独自性は、ハイ・テック・ハイの形成と展開に学校改革の理論を見出すことにある。特に1980年代から展開した「エッセンシャル・スクール連盟(Coalition of Essential Schools)」に代表される〈学校での学び〉を中核に据える学校改革の理論と、1990年代に展開した全米の調査研究「新しい都市型高等学校(New Urban High School)」を契機とする〈現実世界での仕事〉を中心とする学校改革の理論との融合と発展を見出すという問題設定にある。 2019年度は本研究が設定した次の時期区分を主な対象とする研究を進めた。それは、「学校から仕事への機会法」の調査研究「新しい都市型高等学校」の着手(1994)から報告書公刊(1999)までを第1期とする時期区分である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度の進捗状況は下記の通りである。 第Ⅰ期は「学校から仕事への機会法」の調査研究「新しい都市型高等学校」の着手(1994)から報告書公刊(1999)までとした。本研究が独自に設定した着眼点①は「新しい都市型高等学校」の前史としてそれを準備した、90年代初頭のリアダンらによる、革新的な「学校から仕事へのプログラム」の著書に高等学校改革の理論を読み込むことであった。それは、『現実の世界のための学校づくり―厳密で現実的な意味を持つ学びのための本質的なガイド―』(1998)と、『現実の学び、現実の仕事―高等学校改革としての〈学校から仕事へ〉―』(1999)であった(Steinberg, 1998; Steinberg et. al, 1999)。 その上で着眼点②は次の通りであった。ハイ・テック・ハイの前史でありその「デザイン原理」を示した「新しい都市型高等学校」の報告書に高等学校改革の理論を読み込むことであった(Big Picture Company, 1998, 1999)。特に、その報告書の冒頭にてリアダンが、「学校から仕事へ」は「間違った名称」であると宣言している点は注目された。リアダンは、カリキュラムへの〈現実世界の仕事〉の追加に留まるのではなく、「学校から仕事へのプログラム」が、「学校全体の改革の梃子」として「学校から仕事へ」の方略を活用する学校において改革の成功があったことを看破しているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の計画は以下の通りである。 本研究の独自の時期区分である、第Ⅱ期は、1999年からハイ・テック・ハイの開校1年目である2001年までとする。すなわち、開校に向けた直接的かつ多角的な交渉が展開した時期である。 着眼点③は、ハイ・テック・ハイの高等学校改革の初期の理論を解明することにある。特に、開校の現実的な条件作成にあたり、ハイ・テック・ハイが生徒の「多様性」を堅持し教育の「公共性」を擁護するために、学校改革の第一の「デザイン原理」として「公平性」を掲げていることが注目される。これは、1990年代に「エッセンシャル・スクール連盟」が最後に付け加えた学校改革の「共通原理」である「民主主義と公平性」との連続性を指摘することができる。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究の進展により(特には節約することが可能となったため)、上記の通りの次年度使用額が生じた。次年度における研究の進展の中で次年度使用額の適切な使用(特には文献資料の購入)を行う予定である。
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