2021 Fiscal Year Annual Research Report
Researches on General Education for the Public Sphere
Project/Area Number |
19K02452
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
大関 達也 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (80379867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 哲学的解釈学 / 公共圏 / 対話 / ストゥディウム・ゲネラーレ / 教養教育 / ガダマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ガダマー(Gadamer, H.-G., 1900-2002)の哲学的解釈学と教養論の観点から、公共圏を形成するための教養教育の可能性を提示することである。その主要な論点は、テクストとの対話、他者との対話、自己自身との対話から成る解釈学的研究が公共圏の形成と、そのプロセスに参加する市民の形成という教養教育の課題にどの程度応えられるのかという問題である。学習者は自ら考え判断する自由と集団的意思決定の過程に参加する連帯の大切さをいかにして学ぶのか。本研究では、様々な専門分野で学習者の問いとなるようなテクストや事物を選択・提示し、文化的・社会的実践に必要となる基礎的なリテラシーを学習者に培い、実践知を養っていくような教養教育を構想する。そのために、第二次世界大戦後のドイツの大学が置かれた社会的・政治的状況からガダマーの思想を捉え直し、解釈学的研究を多元的な社会における対話として発展させることを試みる。 本研究は資料の収集・翻訳・分析によって、3年計画で進めた。1年目は第二次世界大戦後のガダマーの著作とストゥディウム・ゲネラーレに関する資料を収集・翻訳・分析することによって、解釈学的研究と公共圏の関連を検討した。2年目は民主的な文化革新の精神と学問の根源的な理念からガダマーの哲学的解釈学と教養論を捉え直した。3年目はストゥディウム・ゲネラーレの実態を分析することによって、教育空間としての市民的公共圏が成立する条件を探究した。その際に、Casale, Molzberger (2018) に依拠しつつ、ストゥディウム・ゲネラーレの制度的次元、基礎付けおよび正当化の次元、政治的次元を分析した。最後に、学習者の問いとなるようなテクストや事物を選択・提示し、文化的・社会的実践に必要となる基礎的なリテラシーを学習者に培い、実践知を養っていくような教養教育を提案した。
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