2021 Fiscal Year Research-status Report
RMOの組織形成と自治体社会教育・中間支援機能の構造に関する研究
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19K02453
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
櫻井 常矢 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40363775)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | RMO / 地域運営組織 / 中間支援 / 社会教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目となる本年度は、本研究の課題に照らした国内の先駆的な事例への訪問調査をもとにした情報収集、さらには成果発表にも取り組んでいる。これらにかかわる旅費、必要な備品の購入経費を支出している。 まず前年度までの調査研究の成果を踏まえ、これを学会発表(「RMOの組織形成と地域政策(2)-人材発掘・登用の視点から-」日本地域政策学会第20回全国研究大会)の形でまとめている。訪問調査としては、これまでの調査研究の継続としてRMOの組織形成とそれに果たす中間支援施設や社会教育施設等の役割を模索している自治体、あるいは民間の中間支援組織として新たな事業活動の展開を構想・実践している団体について現地調査や情報収集を行った。調査先として、那覇市、山口市、町田市などでのヒアリング等を実施している。小学校でのRMOの設置を推進している那覇市については、特に高齢化や担い手不足という課題を抱えた地域におけるRMOの組織形成とその支援方策の調査検討を行った。こうした地域福祉の課題に照らし、RMOの組織形成にかかわる社会福祉協議会や地域包括支援センターの支援事業に着目している。また、山口市と町田市については、民間の中間支援組織の役割に着目している。特に町田市については、アウトリーチ型の支援手法に特化した新たな支援組織を設立している。いずれの調査からも、公民館等の社会教育行政と社会福祉協議会との連携、あるいはアウトリーチ型の支援手法など、RMOへの支援機能の新たな知見が得られている。 一方で、本年度も新型コロナ感染拡大を受けて、海外調査を含め、当初計画していた国内の訪問調査の多くを実施することができなかった。そのため、直接経費を翌年度に繰り越すこととなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度、新型コロナウイルス感染の影響から訪問調査を充分に実施できなかったという経過を踏まえ、本年度も訪問調査を中心とした研究計画としている。調査先としては、那覇市、山口市、町田市などを訪問している。那覇市では、小学校区でのRMO(まちづくり協議会)の設置を推進している。昨年度の本研究の課題として、高齢化や担い手不足のなかでのRMOへの支援方策を指摘したことを踏まえ、那覇市内のなかでもとりわけ高齢化の深刻な団地自治会とそれを取り巻くRMOの役割に焦点をあてた調査を実施している。具体的には、当該地域が高齢者福祉を課題として抱えていることから、RMOの形成にかかわる社会福祉協議会や地域包括支援センターの支援事業に着目している。 また町田市では、いわゆるアウトリーチ型のRMO支援組織として、2019年に一般財団法人町田市地域活動サポートオフィスを設立している。貸館等を中心とした従来型の支援ではなく、少数精鋭の支援スタッフによる地域訪問型の支援機能を有した中間支援組織という特徴がある。いずれの調査からも、公民館等の社会教育行政と社会福祉協議会との連携、あるいはアウトリーチ型の支援手法など、RMOへの支援機能の新たな知見が得られている。 一方で、前年度末に今後の研究課題とした支援主体が有する学習プログラム等の具体的な支援プロセスまで調査が進展しなかった。これは、新型コロナウイルス感染の急拡大によるまん延防止等重点措置によってヒアリング調査自体の中止等が重なり、調査件数そのものが当初予定からかなり減少したうえ、当該地域が取り組む実践現場の作業観察が制限され、思ったような調査が実施できなかったことが要因である。また、同様の理由から、研究計画記載の海外調査が全く実施できない状況が続いている。上記のことから、本研究は遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
RMOの組織形成とそれに果たす自治体社会教育・中間支援機能の構造と役割に着目する本研究では、本年度に実施できなかった訪問調査を次年度も引き続き進める。その際、下記の諸点を中心にRMOの組織形成との関連を明らかにすることに力点をおく。 第一に、行政による財政支援を含むRMO支援策がRMOの組織構造に与える影響についてである。これは2年目の調査から、RMOの推進を継続している自治体が自らの支援策の見直しに取り組む状況から見えてきた課題であるが、本年度充分な調査が実施できなかったため継続して進めて行くことになる。第二は、RMOの組織形成に対する多様な支援主体によるアプローチの関係構造についてである。特に社会福祉協議会等による地域福祉の課題を切り口としたRMOの組織形成に対して、中間支援組織や社会教育行政がどのようにして接点を持つのか。自治体が有する多様な支援機能が、RMOの組織形成とどのような形で出会うのかについてである。本年度の調査では、社会福祉協議会による自治会への福祉的アプローチを端緒として、さらに広域的な補完機能を有したコミュニティ組織の形成へと発展するケースが見られているが、こうした事例へのさらに詳細な検討となる。そして第三は、支援主体それぞれが有する支援プログラムの分析である。特に初年度の調査から地域コミュニティへの支援を意図した興味深い学習プログラムが明らかとなっているが、それらの開発プロセスや実践上の工夫と課題、そしてRMOの組織形成に対するこうした学習プログラムの効果について検討していく。これもまた本年度着手できなかった研究課題となる。次年度はこうした研究課題のもとに取り組むと同時に、学会への投稿論文等の形で研究の成果をまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、前年度に提起した今後の研究課題に関する訪問調査を実施することができなかったことがあげられる。新型コロナウイルス感染拡大に伴うまん延防止等重点措置によって、予定していた訪問調査自体が中止となり、調査件数そのものが当初の予定から大幅に減少したためである。とりわけRMOの組織形成という本研究の性格から、当該地域でRMOの運営等に取り組む当事者への直接的なヒアリングが必要になるため、感染防止策としての地域活動の自粛や公民館等の地域拠点施設の利用自粛がそのまま本研究が滞ることに結びついてしまったことが理由である。 今後の使用計画として、感染状況が一定の落ち着きを見せつつあるなか、新型コロナウイルス感染への対策は充分行ったうえで可能な限り訪問調査を実施する。同時に、前年度までの研究成果を学会への投稿論文等の形でまとめる作業にも取り組む。訪問調査の対象は、「今後の研究の推進方策」にも記載のとおり国内の自治体を中心に取り組むが、海外渡航が可能となった段階で当初の研究計画に記載した海外の事例調査も実施することとし、それにかかわる旅費を使用する。そのほか、研究のまとめや論文執筆に必要な資料、文献等にかかる物品費を使用する。いずれも本研究の研究計画に沿った形での使用となる。
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