2019 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける愛国心を形成する学校行事・儀式の普及とダイバーシティ教育の起源
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19K02462
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 隆之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60288032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 愛国心教育 / ダイバーシティ / アメリカ新教育 / プロジェクト / 忠誠の誓い / リクリエーショ運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者:二つの作業を行った。第一に、19世紀末から1920年代にかけてのアメリカにおける「忠誠の誓い」及びアメリカ国旗運動の史的展開の研究を行った。関連する文献を調査して入手し、読解した。第二に、ホーレスマン・スクールにおける「忠誠の誓い」に関わる教育活動及び、プロジェクトによる愛国心教育の調査を行った。ホーレスマン・スクールでは、劇プロジェクトにおいて国旗への忠誠心が取り入れられていることが明らかになった。そのような活動と学校行事・儀式との関係は今後の課題である。 当初は、進歩主義教育運動において愛国心教育が民主化されていったと予測していた。しかし、進歩主義教育運動以前からの「忠誠の誓い」に関する取り組みをみると、早くから連邦政府以外の多様な勢力や要因が、愛国心教育に関与していたことが明らかになってきた。19世紀末頃から20世紀初頭にかけての「忠誠の誓い」に、ダイバーシティの萌芽が認められることについては、次年度以降も更に検討を継続する予定である。 研究分担者:19世紀末からアメリカで強化された愛国心教育の状況と、日本でつくり上げられた教育勅語体制の比較検討を行った。日本では学校が超国家主義にのみこまれるが、アメリカではクラブ活動とか民間のリクリエーショ運動が発展して、学校教育とは離れていったという相違を解明した。その成果を、関西学院大学教育学会において(2020年3月5日)、「革新主義時代における「よきアメリカ市民」の形成」と題して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の本年度の課題は、学校行事・儀式の実際と普及に関する文献や資料の収集と読解にあったが、対象の絞り込みに時間がかかった。学校教育における「忠誠の誓い」の普及についてはかなり理解が進んだが、それが学校行事・儀式としてどのように実践されたのかについてまでは踏み込めなかった。また、ニューヨーク市にあるコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ附属校の実践についても、十分な考察ができなかった。新型コロナウィルス感染症拡大にともない、研究会を開催できず、メールでの打ち合わせになった。以上の理由から当初の計画より遅れ気味である。しかし、研究すべきことは明確なので、二年目には計画通りに進められるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年予定している課題は、愛国心の育成を意図する具体的な学校行事・儀式の背景にある思想に考察を深めることにある。研究代表者は、昨年の遅れを取り戻しながら、愛国心教育におけるダイバーシティの側面について、「愛国心プロジェクト」の基礎となった、ウィリアム・H・キルパトリックの教育哲学講義における 民主主義、国家、マイノリティの教授や、文化間教育や文化的多元主義の思想を取り上げる。研究分担者は、日米の愛国心に関わる教育の比較検討を継続しつつ、学校行事・儀式を、校内レベル、ローカル・レベル、ナショナル・レベルといった視点から考察する。
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Causes of Carryover |
2020年春期に渡米する予定であったが、コロナウィルス感染症拡大のために中止した。
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