2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K02466
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Research Institution | St.Margaret's Junior College |
Principal Investigator |
野尻 美枝 立教女学院短期大学, 幼児教育科, 准教授(任期制) (60554110)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児教育史 / 保育実践史 / キリスト教主義保育 / 恩物積木 / 家庭支援 / アメリカ幼児教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「社会に開かれた」幼児教育の実現方策について、近代日本をはじめ同時代の北米幼児教育に焦点を当て、近代日本キリスト教保育の実践への教育学的かつ歴史的視座に基づいた実証的な検討を通して、今日の幼児教育に対する方策の示唆を得ようとするものである。研究期間は、2019年より4年間を予定している。 研究初年度にあたる2019年度は、北海道、関西地方、首都圏の代表的なキリスト教主義幼稚園において史料調査を実施した。また、アメリカにおける関連機関の協力を得て、オンラインおよび現地調査を通して史料収集を行うことができた。 これにより得られた成果は、次の二点である。第一に、アメリカ幼児教育においてキリスト教主義とフレーベル主義が交差する契機を明示することができた。当時、フィラデルフィア万国博覧会にて注目された幼稚園教師エミリー・コーとスーザン・ブロウに関する実証を通して、アメリカにおける「キリスト教主義保育」の嚆矢を明らかにした。第二に、近代日本の恩物積木の実践史から当時のアメリカ幼児教育との比較検討を行うことによって、アメリカ幼児教育との関係性および近代日本におけるキリスト教主義保育の特徴の一部を描出することができた。 今後はこれらの示唆を基に、調査対象を広げて実践の変遷を検討したい。これに際しては、世界情勢等を鑑みながら未着手である幼稚園の史料収集およびアメリカ幼児教育の追加史料の収集を適宜実施することが肝要であると捉えている。実践史の変遷と日米相互の関係性等の検討を通して、社会に開かれていく幼児教育の諸相を示唆したいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料収集において調査協力を国内外より得ることができた。特に、国内調査においては初年度である今年、調査対象とする幼稚園のうち、半数近い園から必要な史料を得ることができた。
またアメリカにおける史料調査においても、現地研究者との交流を通して有益な情報と共に、基礎調査として必要な1次史料を入手することができた。特に、現地関係者よりオンラインで史料提供を受けることができたことは、本研究の進捗に大変有益な支援となった。
これら史料を用いた検討の結果については、別記の通り学会誌への投稿および学会発表にて成果を公表するに至っている。以上を総合的にふまえ、概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
複写・撮影した史料の解読、および英文史料の翻訳作業等、今後は史料の精査が課題となる。また並行して本研究においてさらに必要な史料調査を実施したいと考える。
しかしながら今般の世界的に深刻な社会情勢を鑑み、適宜研究計画の修正が必要になると思われる。その場合には、2020年度は現在手元にある史料の検討を中心に、アメリカ幼児教育史の変遷と日本における幼児教育の受容と関係性をより具体的に描出する予定である。
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Causes of Carryover |
所属先異動による研究室に必要な史資料の搬出入に伴う経費が、当初の見通しより安価で済んだため、残金が発生した。翌年は当該助成金を史料の印刷製本費に充当予定である。
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Research Products
(4 results)