2021 Fiscal Year Research-status Report
〈政治〉と〈経験〉の人間形成論的探究─プラグマティズムによる教育的正義の再構築─
| Project/Area Number |
19K02474
|
|---|
| Research Institution | Nagoya University |
|---|
Principal Investigator |
生澤 繁樹 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (70460623)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
| Keywords | 科学技術 / 常識と科学 / コミュニティ形成 / 国家 / 政治教育 / 情念 / 現在の歴史 / 民主主義 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会正義の構築を求める〈政治〉と人間存在にとっての〈経験〉の在り方・諸相の再理解とをつなぎあわせる新たな人間形成論の理論的枠組みを構想することを目指している。その手がかりとして、本研究では、古典から現代へと至るプラグマティズムの哲学・思想的方法の展開可能性と理論的諸課題について検討してきた。
計画3年目の2021（令和3）年度では、哲学的・理論的課題を踏まえ、教育的正義の構築に対するプラグマティズムの哲学・思想的方法の意義を歴史的・思想的なアプローチから検証し、これを評価した。検討作業としては「科学技術と人間」という政治社会と生活経験との問題が交差する具体的諸課題に目を向け、プラグマティズムの可能性とその歴史的・現代的課題について考察した。
そこで明らかとなったのは、社会正義の構築を求める〈政治〉と人間存在にとっての〈経験〉とを結びあわせる課題において、民主主義と探究する公衆のあり方がプラグマティズムの哲学・思想上の重要な焦点となっているということであった。さらに、民主主義と探究する公衆を再考するなかで、国家や国家の教育を問うためにプラグマティズムの諸実践が歴史上いかなる役割を果たしたかという点も検討した。
本年度では、全体として、思想史的な角度から教育的正義の構築のための人間形成論を構想するための視座をプラグマティズムのなかに見いだす研究に従事してきた。プラグマティズムにはまとまった正義の理論、体系、構想などがなく、正義の問題とプラグマティズムとの理論的・思想史的関係の弱さが指摘されることもある。プラグマティズムの哲学・理論的考察と歴史的・思想的考察を発展的に継続しながら、最終年度（22年度）ではさらに学校改革のなかでの「教育的正義」と日本の文脈に固有なプラグマティズムの展開に注目し、〈政治〉と〈経験〉をつなぐ新たな人間形成論の理論的枠組みと諸条件の解明に迫っていく。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大にともなう大会のオンライン化、また国内外出張や資料調査等々が十分に実施できないという制約は依然としてあるものの、シンポジウムや課題研究などでの研究報告機会も複数得られ、本研究の課題解明に資する成果は一定程度得られたものと評価する。当初の計画以上のものとはいえないが、研究は滞りなく遂行することができている。
成果としては、論文・書籍の刊行と学会発表等を進めるなかで、プラグマティズムの直面する哲学的・理論的課題だけでなく、歴史的・思想的課題を踏まえた検討を行なうことができた。人間形成論を必要とする教育的正義の構築の問題にプラグマティズムがいかなる貢献を果たしうるかという問題は、つづく最終年度の課題のなかで、具体的問題や実践を踏まえながら、丁寧に考察を進めていきたい。昨年度につづき、国際学会での報告など遂行できなかった計画はあるものの、計画を一部変更し、英語論文の執筆や文献調査・資料整理等のための時間に充て、課題解明のための研究を滞りなく進めるための時間を一定程度確保することができた。
以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
|
| Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症拡大等にともなう研究上の制約は引きつづき残ると思われるが、オンラインでの企画や研究会、大会への参加・報告など、昨年度の研究活動と同様、国内にて具体的に研究課題解明を遂行するための手立ては整っている。国際学会での学会参加や報告にともなう困難は引きつづき想定されるものの、オンラインでの大会参加や学会誌への積極的投稿など、研究成果を公表するための機会を広く見いだしつつ、研究課題の解明に取り組む。
|
| Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大防止をめぐる国内外の社会状況から、国際学会、国内学会、研究会等の多くがオンライン開催となった。それにより国内外の出張旅費等の支出が不要となったため、次年度使用額としての繰越金が発生した。本年度もまた、一部対面での開催を予定している学会はあるものの、オンラインにて開催される大会も依然として少なくなく、学会報告・資料調査等のための研究旅費等の支出を中心に計画変更が生じる見込みである。繰越金の使用計画としては、昨年度と同様、論文執筆・書籍刊行等による研究成果の発表や、課題解明を遂行するために必要な資料収集と整理等に対する研究費として使用するなど、学会報告と書籍・論文刊行に向けた文献調査を丁寧に行ない、進捗状況を確認しながら、引きつづき研究目的の確実な遂行に努めていく。
|
-
[Journal Article] Philosophical reflections on modern education in Japan: strategies and prospects2021
Author(s)
Kato Morimichi, Matsushita Ryohei, Ueno Masamichi, Fujii Kayo, Kashiwagi Yasunori, Saito Naoko, Akiyama Tomohiro, Ono Fumio, Okabe Mika, Yamana Jun, Izawa Shigeki, Maruyama Yasushi, Okamura Miyuki, Hung Ruyu, Kwak Duck-Joo
-
Journal Title
Educational Philosophy and Theory
Volume: Published online: 28 Dec 2021
Pages: 1-12
DOI
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
