2021 Fiscal Year Research-status Report
「道徳科」における教育評価の歴史的研究-戦前日本における修身科を中心に-
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19K02476
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 修身科 / 試験 / 道徳科 / 評価 / 考査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までに行ってきた、都道府県資料と長野県松本小学校の試験資料による、明治期~大正期の小学校における修身科試験問題の分析を中心とする修身科試験法の考察を元にしながら、これと、行状や操行といった行動の評定との関係、また性質品評の調査、個性調査など性格の診断や児童理解実践との関係を分析した。 そこでは、①学制期(1872-1880)においては、行状評価の道徳性形成における意味、②教育令期(1880-1886)においては、儒教の知徳の不分離と読書主義を背景とする修身教授とその評価、品行の評定、及び性格の診断評価(性質品評表)との関係性、③第一次小学校令期(1886-1891)においては、森有礼の主意主義を背景とする知的教科としての修身科の軽視(教授時数の削減と教科書の不使用)と人物査定法の実践的帰結、④第二次小学校令期(1891-1900)においては、修身科の「復活」、修身科試験の評価と操行調査・査定との関係、またそこにおける教育勅語発布との関係、⑤第三次小学校令(1900)以降の明治期においては、試験から考査への評価法の転換、修身教科書の国定化、学籍簿における操行欄の設置、訓練論の流行といった中での修身科評価の変化、といった点を分析の視角として検討を行った。 資料的限界もあって、その実相を捉えがたい側面もあるが、総じて、道徳が国家によって実質的に法規範化されていくこともあって、道徳的性格の診断、修身科評価における道徳性の知的な側面の評価、行状・操行評価における道徳性の情意的側面の評価が総合されて、児童の道徳的発達を継続的に捉えていくという志向は弱い。また、性格の診断は個々の子どもの全体的理解へと向かうのではなくそのまま人物評定へとつながり、修身科の評価は、行為の動機を捉えさせようとする場合でも、発達的視点を欠いて、カテキズムを免れていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ禍による出張の制限により、当初予定していた資料収集が行えていない。 また、この研究の初年度(2019)から3年間、申請時に予定していなかった学部長職(2年間)、副学長職(1年間)に就かざるを得なくなり、当初予定していたエフォートを確保することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は可能な限り資料収集につとめていく。 当初予定では、国民学校令期まで検討を行う予定であったが、時間的に困難なため、明治期~大正期までに検討時期を変更して検討を行う事にする。
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Causes of Carryover |
本年度、新型コロナ禍により、当初予定していた資料調査等の出張にいくことができなかったので、これに必要な旅費、資料整理補助等の費用を使用して研究を進めることができなかった。このため当初計画を変更して、研究期間を一年延長することにし、申請して認められた。 新型コロナによる移動制限や施設の利用制限も緩和されてきているので、本年度は昨年度できなかった資料収集と分析に務めて研究をまとめたい。助成金は、旅費、収集資料の整理、及び分析に必要な書籍等の費用に使用する。
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