2019 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒のストレス対処能力形成を支援する食教育プログラムの開発
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19K02478
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
柴 英里 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (70611119)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストレス対処能力 / 児童生徒 / 食教育 / 学級経営 / ウェルビーイング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ストレス対処能力の形成を主眼とした食教育プログラムを開発し、そのプログラムが目指すストレス対処能力形成にどのように寄与するのかを検証するとともに、開発・改良した食教育プログラムを普及させることである。2019年度(1年目)の主要な成果は、以下の通りであった。 (1)児童用ストレス対処能力尺度を作成し、小学校5年生96名を対象とした質問紙調査により、主観的ストレス度とストレス対処能力の実態が明らかになった。さらに児童の主観的ストレスの高さが、集中力の低さや気持ちのバランスの低さ、心のざわつきの程度と関連することが明らかとなった。これらの知見から、主観的ストレスが児童の認知機能に関係する可能性を示唆された。子どもたちの主観的ストレスに対して、積極的に対処することが、抑うつリスクの低下だけでなく、学校生活の充実・学業パフォーマンスの向上に貢献する可能性があることを支持する結果が得られた。 (2)当初の研究計画を拡張して、食教育だけでなくウェルビーイングに関する国内外の文献収集を行い、ウェルビーイングの向上を目指した取組や食教育プログラム開発に資する情報を収集・整理した。新たにウェルビーイングに着目した理由は、ストレス対処能力のポジティブな発達がウェルビーイングなどのアウトカムに影響することが報告されており、児童生徒においてストレス対処能力とウェルビーイングの関連を検討する必要性があると考えたためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
児童が有する主観的ストレスおよびストレス対処能力の実態については、小学校5年生3クラス96名を対象とした調査から、限定的ではあるが明らかとなった。一方で、中学生が有する主観的ストレスやストレス対処能力の実態については、調査準備まででとどまったため、2年目に調査を実施する。 国内外における健康教育・食教育教材およびカリキュラムの収集・分析については、ほぼ完了した。さらに文献収集を拡張した結果、研究計画段階では想定していなかったが、臨床心理学や社会心理学といった領域で活用されている手法・スキルを取り入れることの必要性が示唆された。小学校5年生を対象として実施した介入授業において、従来は認知行動療法としてうつ病の治療等に用いられてきたマインドフルネスの手法を取り入れた活動を通して、児童の主観的ストレスが有意に低下することが明らかとなった。食領域においてもマインドフル・イーティングというアクティビティがあり、臨床心理学や社会心理学の領域で活用されている手法・スキルを取り入れることによって食教育プログラムをより効果的なものにできるという可能性に至った。この点については、2年目以降に実証的に検討を行う予定である。 食教育プログラム開発については、2年目に小学校2~3クラスの児童を対象としたパイロット・スタディを実施する予定であり、それに向けた準備が予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(2年目)は、次の3つをサブテーマとして研究を推進する。 ①主観的ストレスおよびストレス対処能力の横断的調査:前年度に、引き続き、児童および生徒に対する横断的調査を実施する。その際、新たな調査項目として、ウェルビーイングに関する項目を追加する。新規調査項目の導入理由は、ストレス対処能力のポジティブな発達がウェルビーイングなどのアウトカムに影響することが報告されており、児童生徒においてストレス対処能力とウェルビーイングの関連性を検討する必要があると考えたためである。またウェルビーイングの向上は、本研究の柱であるストレス対処能力形成およびストレスの一次予防に大いに寄与する可能性がある。 ②介入プログラムの開発:ストレス対処能力形成およびウェルビーイング向上に資する介入プログラムを開発し、パイロット・スタディとして小学校2~3クラスで準実験デザインによる開発的実践を行う。研究申請時には、食教育を主眼としたプログラムを想定していたが、食教育だけでなく、コーチングやマインドフルネスなど、さまざまな手法を導入した授業開発を行う。 ③介入プログラムの効果を、ストレス対処能力形成ウェルビーイング向上の観点から検証する。
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Causes of Carryover |
研究計画段階では、「疲労・ストレス測定システム」(130万円)の購入をする予定であった。しかし、それ以前に文献収集や質問紙調査をより精緻に行う必要があった。そのため、「疲労・ストレス測定システム」の購入を、次年度に行うことが妥当であると判断した。これにより、636,829円を次年度に繰り越し、機器の購入に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)