2019 Fiscal Year Research-status Report
養護訓導養成制度に関する歴史的研究―戦時下におけるケア専門職養成の変容―
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19K02480
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
三井 登 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (50455002)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学校衛生 / 養護訓導 / 資格検定試験 / 看護婦 / 国民学校令 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.国立教育政策研究所教育図書館所蔵「重田定正文書」中、養護訓導養成に関連する行政文書、学校衛生関係雑誌などを資料に、戦時下における新制度として始まった養護訓導の量的確保計画の構想について検討した。。養護訓導養成制度には、無試験検定と試験検定があるが、本研究では制度発足直後において増員計画の主軸を担った試験検定に着目し、その構想の特徴(試験程度・教育程度など)を明らかにした。2.養護訓導の増員を急ぐために、既存の学校看護婦や養護婦に講習会を受講させ、その修了者に試験を受験させて養護訓導にしていく計画が最も現実的に増員できると試算し、文部省は試験検定を養成の主軸に据えたことを明らかにした。3.試験検定の程度や、それと関わる学校看護婦の学歴などの教育程度を関連づけて試験検定の特徴を明らかにしたことは、先行研究の欠落部分を補う成果である。全国の学校看護婦の学歴に関する調査を参考にした。4.養護訓導の量的確保を図るために、文部省が受験資格要件を緩和した背景に、戦局の悪化による看護婦不足が影響していたことについて、衛生雑誌関係の資料から触れることができた。5.養護訓導の「医者がわり」について、学童疎開史研究から示唆を受けた。無医村対策と養護訓導の位置づけについては研究当初より視野にあったが、具体的な指摘に基づき、衛生関係雑誌等の記事の収集を行った。今後この領域に関する資料の収集を継続していくことにする。6.看護婦不足と養護訓導の量的確保の矛盾について先行研究に依拠しながら、衛生関係雑誌等によって資料的に位置づけることができたが、両者の関係を行政文書で十分に裏付けるところまではいかなかった。看護婦養成施設卒業時にどのような進路に配置されたか、あるいは進路選択したかについて引き続き検討する。看護婦資格所有者の側から見た養護訓導像となるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
養護訓導養成制度における無試験検定と試験検定の二つのうち、その主軸となった試験検定に関する周辺資料を収集することができた。今年度研究計画で明らかにする予定であった試験検定の程度や受検者たちの教育程度など、部分的にではあるが資料を入手することができ、学会発表したことが成果である。次年度予定している養成施設に関する資料も一部入手できた。これまで、文部省の史料を中心に収集してきたが、養成施設側の資料を入手できたことは当初予定していた資料収集の計画よりも前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集してきた文部省関連資料、衛生関係雑誌資料を基礎としつつ、当初の計画通り養護訓導養成所の資料を中心に調査をする。また、引き続き看護婦動員の実態(公文書を中心に)と、看護婦資格取得者と女性の社会進出との関係から、養護訓導の位置づけを資料的に後づける作業は継続する。 新型コロナの影響で、公共図書館、大学図書館、公文書館など、史料調査を中心とする本研究において、感染率の高まりによって利用制限がかかると、研究を推進しがたい状況になることが懸念される。
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Causes of Carryover |
複写費が当初予算より少額で済んだこと。3月に予定していた資料調査が、新型コロナの影響で中止になったことにより、予定していた資料調査の旅費に次年度予算として計上することにした。
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Research Products
(1 results)