2023 Fiscal Year Research-status Report
Anthropology of Homo Patiens: A Philosophical Study of the Weak Knowledge and Technical Rationality
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19K02485
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小野 文生 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (50437175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホモ・パティエンス / 弱さに基づく知 / 技術的合理性 / ユダヤ思想 / レヴィナス / アガンベン / 石牟礼道子 / 鶴見俊輔 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究は、研究計画で設定した4つの研究軸にしたがって、ひきつづき文献・資料の調査・分析と理論的状況の把握に努めた。(1)「弱さに基づく知の系譜の思想史的検討」については、鶴見俊輔、花崎皋平、石牟礼道子などの思想を手がかりに考察を進めた。(2)「ユダヤ思想における受苦思想の遺産の考察」については、ショア関連、ブーバーの思想などを手がかりに考察を進めた。(3)受難経験から生み出される思想の検討/フィールド研究」については、新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響で活動を著しく制限されたが、水俣でのフィールド調査を進めた。また、関連する領域として原爆の記憶、沖縄の記憶に関する研究も参照しつつ研究を進めた。ハンセン病療養所は訪問できなかったが、ハンセン病関連の文献を読解し、また、長島愛生園の園内雑誌『愛生』の読解を少しずつ進めた。(4)「技術的合理性に関する哲学的考察」については、ひきつづきフランクフルト学派の技術思想のほか、技術哲学と呼ばれる領域の文献読解を進めた。 こうした活動の一環として、国際シンポジウムでの英語による発表のほか、マルティン・ブーバーに関する英語論文、および「原爆の絵」プロジェクトをテーマにしたドイツ語による論文の執筆を進めた。さらに、現在、ひきつづき本研究の主題にかかわる単著『ホモ・パティエンスの人間学――もろい部分にたつ思想のために』(東京大学出版会)を、本研究の成果の集大成として準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延長申請をおこなった結果、5年目に当たる本年度は、昨年度に総括的な成果として出版した単著『<非在>のエティカ――ただ生きることの歓待の哲学』(東京大学出版会)を礎石にして、ひきつづきやり残した研究を推進した。それを承けて、さらに成果として『ホモ・パティエンスの人間学――もろい部分にたつ思想のために』(東京大学出版会)を上梓すべく、鋭意執筆中である。このように、一方においては「おおむね順調に進展している」と評価することができるが、他方で予定していた国内フィールドワークや海外渡航が大幅に制限されたこともあって、研究の一部に関しては「やや遅れている」と言わざるを得ない部分もあることはたしかである。よって、本研究は延長申請をおこない、来年度さらに研究の充実を図りたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の根幹にかかわるような、特別な推進方策の変更の必要性は、現段階では感じていない。ただし、新型コロナ・ウィルスの感染拡大によるフィールド調査、海外渡航などが多少とも制限されることが予想される。今後の動向を見極めながら、可能な調査の方法を考え、場合によっては計画変更をおこない、研究活動の道を探っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルスの感染拡大の影響により、国内フィールド調査および海外渡航が制限されたために、予定していた額を使用しなかった。そのため、次年度も延長申請をおこない、フィールド調査等、適切に助成金を使用していく予定である。
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