2019 Fiscal Year Research-status Report
Cultural Memory through Remediation and Its Pedagogical Using from the Historical and Systematic Perspective
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19K02498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山名 淳 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (80240050)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育 / 集合的記憶 / 文化的記憶 / 想起文化 / ビルドゥング |
Outline of Annual Research Achievements |
一年目の活動は、大きく分けて(1)研究会の開催、(2)具体的な研究調査の遂行および成果の発信、(3)国際的な研究ネットワーク形成、といった三つの要素に分けることができる。 (1)研究会: 一年目は、計2回の研究会を行った。第1回研究会(2019年7月9日、東京大学)では、本研究会の趣旨を確認し、今後の具体的な活動について話し合った。第2回研究会(同年8月22日、東京大学)では、本研究会にとって重要となるA. ホワイトヘッド『記憶をめぐる人文学』(2017年)の検討を、その飜訳者でもある三村尚央氏を招いて行った。 (2) 具体的な研究調査の遂行および成果の発信: 大きくは三つのことを行った。①神戸市の「人と防災未来センター」を人間形成の観点から考察し、第3回国際メモリー・スタディーズ学会(6月25-28日、マドリード)で発表した。②広島における原爆の記憶継承に関する理論および実践に関する検討を行い、複数の論考を公にすると同時に、教育哲学会年次大会(2019年10月12日、広島大学)における研究討議の司会コメントの基礎とした。③原爆の記憶について演劇を通して伝承する試みを分析することの一環として、朗読劇「あの夏は忘れない」についての考察を行った。また、原爆の記憶を主題とした演劇「あの夏の絵」(青年劇場)を考察するための予備調査を行った。 (3) 国際的な研究ネットワーク形成: 教育哲学者のローター・ヴィガー氏(ドルトムント工科大学)の研究グループと、カタストロフィの記憶と想起をめぐる日独共同研究を進めている。一年目は、本科研による研究活動は、そのための基盤としての意義をも有している。10月1日から2日にかけて上智大学で開催された日独想起文化ワークショップ(ヴィガー氏のグループも来日)に参加し、演劇とカタストロフィの教育に関する報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)研究会の開催、(2)具体的な研究調査の遂行および成果の発信、(3)国際的な研究ネットワーク形成ともに、概ね順調に進んでいる。 国内外の報告や研究成果の刊行については、当初予定していたよりも遂行できた部分が多い。また、二年目以降の本格調査のための準備も、関係組織および関係者のご協力により充実した。とくに、研究実績の画用においても言及したが、原爆の記憶を主題とした演劇「あの夏の絵」を考察するための予備調査(7月31日、青年劇場事務局)および観察( 12月9日、トークネットホール仙台他、複数回)を行えたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末には新型コロナウイルス問題で、とりわけ国際的な研究ネットワーク形成、またカタストロフィの記憶に関する演劇に関する本格的な調査の準備に関して若干の影響を受けた。今後の状況次第だが、オンラインによるコミュニケーションの活用など可能なことを最大限に活かして、本科研による目的を達成したい。 (1)2年目の中心に置いているのは、被爆体験継承者プログラム関係者(2017年度「原爆の絵」プロジェクト参加者であった被爆証言者A氏およびその継承者グループ、広島平和センター担当者)へのインタビュー調査および分析・解釈を行うことである。 (2)国際的な情報交換は1年目同様に継続する。国際メモリー・スタディーズ学会で活躍するアストリッド・エアル氏(フランクフルト大学)の理論テキストの翻訳を進めていきたい。その際に、オンラインでのエアル氏との情報交換を積極的に行う予定である。また、ローター・ヴィガー氏(ドルトムント工科大学)との共同研究についてもオンラインでの打ち合わせを引き続き行う。 (3)国内の研究協力者と定期的に(年3回程度)研究会を開催する予定である。
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Causes of Carryover |
物品費が予想より若干安価であったため、その差額が次年度使用額となった。
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