2019 Fiscal Year Research-status Report
20世紀ドイツにおける新教育と児童福祉の連携に関する実証的研究
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19K02501
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江頭 智宏 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (40403927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学校田園寮 / ドイツ無宗派福祉事業連盟 / 新教育運動 / 民間福祉団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の2019年度は、本研究の取っ掛かりとして、ドイツ無宗派福祉事業連盟(Deutscher Paritaetischer Wohlfahrtsverband e. V.,以下「DPWV」)に関する史料を学校田園寮との関わりから収集すると共に、学校田園寮に関する史料をドイツ無宗派福祉事業連盟との関わりから新たに収集した。具体的な史料の収集場所は、フランクフルト市史研究所文書館、へッセン州立文書館ダルムシュタット館、フランクフルト大学文書館、ベルリン連邦文書館、ベルリン州立文書館の各文書館と、教育史研究図書館(ベルリン)、国立図書館フランクフルト館、ベルリン州立図書館の各図書館である。 2019年度中に公刊した具体的な成果としては、『教育史研究室年報』に「『ドイツ無宗派福祉事業連盟通信』にみるドイツ無宗派福祉事業連盟(DPWV)と学校田園寮の関係-1950年代~1960年代前半に焦点を当てて-」を著したことが挙げられる。この研究は、1951年~1963年までのDPWV発行の『DPWV通信』(DPWV-Nachrichten)を、学校田園寮に焦点を当てて分析したものである。当研究を通して、『DPWV通信』は、DPWVを始めとする福祉事業に携わる関係者に学校田園寮のことを広報したり、学校田園寮活動の関係者が学校田園寮活動は教育活動のみならず福祉事業でもあるという認識を改めて確固たるものにしたりするうえで、大きな役割を果たしていたと論じた。 新教育運動に根差した教育実践と民間福祉団体との関係を見るうえで最も基礎となるであろうDPWVと学校田園寮との関わりを史料収集と論文公刊を通して掘り下げたことが本年度の意義であり、教育と福祉の連携の実践史の一端を明らかにしたことは、今日における教育と福祉の連携の推進においても有益な指針となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であるため公刊した研究成果としては十分ではないが、ドイツ無宗派福祉事業連盟と学校田園寮との関係を明らかにすることができる多岐に亘る史料を、ドイツ国内の文書館と図書館で半月かけて収集することができたのは大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ無宗派福祉事業連盟(DPWV)と学校田園寮との関係に関わって数種類の史料を2019年度中に収集したものの、両者の関係に関して2019年度中に公刊した論文では『DPWV通信』しか史料を使用することができなかった。そのためまずは、入手済のドイツ学校田園寮連盟の機関誌『学校田園寮』を用いて、そこに記されたDPWVに関する記述に依拠しながら、学校田園寮とDPWVとの関係を明らかにする。また、DPWVが定期的に公刊した『DPWV叢書』(Schriften des Deutschen Paritaetischen Wohlfahrtsverbandes e. V.)や、DPWVのヘッセン州支部の諸史料についても、学校田園寮との関係に関わって既に入手しているため、それらを用いることによっても学校田園寮とDPWVとの関係を明らかにしたい。加えて、フランクフルト近郊の「ヴェクシャイデ学校田園寮」の運営に携わると共に、DPWVにも中心的に関与した法学者ヴィルヘルム・ポリッヒカイト(Wilhelm Polligkeit)も本研究テーマにおいて重要な人物であると考えられるため、学校田園寮とDPWVの関係という観点から彼に関する考察を深めたい。 そのうえで、連邦民間福祉団体連合(Bundesarbeitsgemeinschaft der Freien Wohlfahrtspflege)の傘下におかれたDPWV以外の民間福祉団体に関しても、それらの団体における児童福祉・青少年福祉事業に目を向けることを通して本研究をさらに進めていきたい。特に、ドイツ・カリタス連合はフライブルクに、ドイツ・ディアコニーはベルリンに、それぞれ全国レベルの固有の文書館及び図書館を有しているため、ドイツへの渡航が可能となればそこでの史料収集を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で3月の国内出張ができなかったことや、訪問した文書館が史料の写真撮影を新たに認めるようになったため複写代が大幅に減ったことがその要因である。新型コロナウイルスの関係でドイツへの渡航が可能になるか不透明であるが、ドイツでの史料収集が本研究の核をなすものであるため、2020年度はドイツでの史料収集の期間を当初の計画よりも長めに設定する。
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