2021 Fiscal Year Research-status Report
20世紀ドイツにおける新教育と児童福祉の連携に関する実証的研究
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19K02501
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江頭 智宏 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (40403927)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学校田園寮 / ドイツ無宗派福祉事業連盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ禍のために渡独をすることができず、訪問予定であったドイツ・カリタス連合やドイツ・ディアコニーの文書館や図書館を訪問することができず、予定通りに研究を進めることができなかった。そうした中、2019年度の渡独の際にフランクフルトの国立図書館で既に収集していた資料に依拠しながら、フランクフルト・アム・マインの地域的な組織であり、ドイツ無宗派福祉事業連盟にも加盟している「学校田園寮教育の振興協会」の歴史について、とりわけ同協会の発足期(1870~80年代頃)とナチス期の動きについて教育と福祉の観点から以下のことを明らかにした。 協会は、元々は「貧困家庭の病弱な児童生徒の休暇コロニー協会」という名称であり、貧困家庭の病弱の子どもたちを休暇コロニーに派遣することを目的として発足した。その点では福祉を第一の目的としていたが、医師と共に教師の協力のもとに運営されるなど学校や教育とも密接な関わりももっており、協会は教育と福祉の連携を先駆的に体現していた進歩的な団体であったと言える。 そしてナチス期に、協会は、ナチス国民福祉団からの圧力から脱するために「学校田園寮教育の振興協会」に改称したが、それが可能であったのは協会が伝統的に教育の側面を有してからである。しかしながらそれによって協会が福祉の側面を失ったと考えるのは早計である。学校田園寮活動は元来教育と福祉の連携もとに成り立っているものであるため、「学校田園寮教育の振興協会」となったとしても協会は決して福祉の側面を失うことはなく、ナチス体制下にありながらも、教育と福祉の連携という協会の元来の立場を最大限維持することができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍でドイツの文書館や図書館での資史料収集が困難であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も夏までに渡独することが困難であるため、国内で収集することのできる史料に切り替えながら研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で渡独することができず、外国旅費として予定していた金額が余ったため。
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