2019 Fiscal Year Research-status Report
市町村教育委員会の組織論的研究ー組織の「健全性」とその規定要因の分析を中心にー
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19K02505
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
河野 和清 京都光華女子大学, こども教育学部, 教授 (30116579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育委員会 / 組織健康 / 教育長 / 組織開発 / 計画的介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究目的は、国内外の文献を渉猟するとともに、市町村教育委員会の教育長に対する面接調査(事例調査)を行うことにより、本研究の分析枠組(理論枠組)を決めることであった。しかし、今年度は、年度末の新型コロナウイルスの感染拡大等に伴う教育委員会の多忙化のため、面接調査はできなかったこと、また同じ理由で外国出張による文献収集はできなかった。そのため、今年度の研究は、日本で国内外の関連文献の収集とその分析が中心となった。その結果、次のことが主に明らかにされた(M.SCOT Norton、Dealing with Change、Rowman & Littlefield,2018)。 (1)OD(organiational development)が組織の健全性(organizational health)を改善するために、その戦略的手法として、企業、教育、福祉等の組織を含めて活用されていること。 (2)ODは、学際的な行動科学的アプローチを採り、組織の有効性(organizational effectiveness)を改善することを大きな目的としていること。 (3)そのために、変革促進者(ファシリテーター、ライン管理者など)などによって、健康な組織風土が惹起できるよう、組織の過程や構造や個人、集団等に対して計画的な介入(panned intervention)が行われること。 (4)この介入は、主にアクション・リサーチ(AR)によって行われること。 このような文献リサーチを踏まえると、今後の研究の分析枠組(理論枠組)を策定するにあたっては、単に教育委員会の組織特性を規定する要因を分析するだけでなく、その組織特性の健全性を担保するために、誰が、どう計画的介入を行うかの視点を、組織開発理論を援用して明らかにする必要性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
学年末に新型コロナウイルスの感染拡大等により、教育長等への面接調査が行えなかったこと、また米国での文献収集が行えなかったことなどの理由で、本研究の理論枠組の策定が十分にできず、初年度の研究計画に遅れが生じていることを認めざるを得ない。ただ、かなり制約された条件下で収集した文献の分析を踏まえると、米国で発達した組織開発論(OD)の観点から、教育委員会の組織特性の健全性をどう図っていくかを視野に入れながら、本研究の理論枠組を策定するほうが有益であることが判明してきた。その意味では、今後の研究の新しい方向性が見えてきたことは、一定の成果であるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の反省点を踏まえ、次年度は、先ず、本研究の理論枠組を策定するにあたって、次の諸点を考慮に入れたいと思う。(1)組織風土、組織健康等の諸概念を念頭に置きつつ、組織の健全性とは何か、その概念を明らかにする。(2)教育委員会で組織の健全性を阻害する要因として、どのようなものが考えられるか。教育長のリーダーシップ、首長部局との関係、学校との関係、保護者・地域住民との関係、集団規範の不適切さ、教育委員に関わる問題、ビジョン・基本計画の曖昧さなど。(3)教育委員会では変革促進者としの役割をだれが担っているか。教育長か、管理主事か、各部門トップか。(4)組織に対する計画的介入をする際の手法としては、どのような手法が使われているか。また、アクションリサーチ(AD)は有効に機能するか。 以上の諸点を念頭に入れて、本研究の理論枠組を策定し、同時に、教育長との面接長を通じて、その妥当性等を探っていく。
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Causes of Carryover |
【遅れの理由等】教育委員会の組織特性に関する理論枠組の策定準備が遅れたため、事例(面接調査)の実施が困難となった。次年度は、収集文献の分析結果を踏まえ、市町村教育長に対する面接調査を実施する中で、本研究の理論枠組を先ず確定し、そのうえで、市町村教育委員会の教育長を対象とする全国的なアンケート調査を実施していきたい。 【使用計画】本年度の使用計画の概要は、次の通りである。 先ず、教育委員会(10団体)に対する事例調査等のため、旅費等(30万円)が必要となる。次に、市町村教育長を対象とした全国調査を行うため、印刷費(20万円)、郵送費(20万円)が必要となる。その他、アメリカ文献調査旅費(30万円)や調査の補助を行うアルバイト費用(5万円)、文房具等の消耗品費(3万円)図書費(20万円)パソコン・複写機の購入費(33万円)等も必要となる。また、教育長に対する全国調査の内容は、主には組織の健全性、組織の健全性を規定する要因、変革促進者、そして計画的介入の方法等に関するものである。なお、今年度の調査は、今般の新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえつつ実施することになる。
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