2020 Fiscal Year Research-status Report
市町村教育委員会の組織論的研究ー組織の「健全性」とその規定要因の分析を中心にー
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19K02505
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
河野 和清 京都光華女子大学, こども教育学部, 教授 (30116579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育委員会 / 市町村教育長 / 組織の健全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、市町村教育委員会の組織の健全性を規定する要因を理論的、実証的に明らかにするものである。初年度では、本研究の分析枠組を策定するため、教育長等への面接調査や文献研究を行う予定であったが、コロナ禍にあって、それが困難となり、この課題は、二年度目に残された。従って、今年(二年)度も、文献研究(先行研究の検討)を中心にしながら、本研究の分析枠組を検討することとなった。その結果、コロナ禍での研究になるため、本研究の調査に当たっては、教育委員会のコロナ対策事業を事例として取り上げ、コロナ対策への組織的対応の観点から、組織の健全性を規定する要因の分析を行うこととし、その場合、次の分析視点が重要であることを明らかにした。 (1)大きな環境の変化(コロナ禍)に対して、どこが主導権をとって、どのように対応しようとしていたかを明らかにする。その際、教育長の対応、会議体としての教育委員会の役割、事務局の対応等を詳細に検討する。(2)都道府県教育委員会や学校(校長等)との連携協力はどのようであったかを明らかにする。(3)環境の変化に対応していくために、教育委員会内部の活用できる資源(人的・物的・財政的資源など)は十分であったかも検討する。併せて、コロナ対策と人口規模との関係も検討する。(4)環境の変化に対応していくために、どのような対応策をとったかを、具体的な内容を把握する(事業数)。(5)教育委員会が対応策を講ずる上で、問題となった点(内容)等も明らかにする。(6)変化への対応に当たって、その対応を阻害する教育行政(教育行政組織)独自の要因があるかどうかも検討する。 以上のごとく、本(二年)度の文献研究を中心とした検討から、本研究を進めるにあたっての分析視角が明らかにされた。次年度(3年目)は、これに基づいて市町村教育長等を対象にして事例研究(できれば質問紙調査)を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、引き続き教育長等への面接調査が行えなかったこと、また、米国での文献収集も行えなかったことなどの理由から、本研究の分析枠組の策定が十分にできず、初年度に引き続き、二年度も研究計画に遅れが生じたことは認めざるを得ない。ただ、かなり制約された条件下で収集した文献の分析や教育委員会の現状を踏まえて、本研究の方向性が見えてきたことも事実である。すなわち、市町村教育委員会のコロナ対策を事例に取りながら、その組織の健全性の阻害要因等の分析を始めることが有益であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の反省点を踏まえ、次年度(三年目)は、本研究の理論枠組として、次の諸点を考慮に入れて、先ずは、教育長との面接調査を、そして次に質問紙調査に臨むこととする。(1)組織健康の概念を明らかにするため、組織の健全性とは何かを明らかにする、(2)市町村教育委員会の組織の健全性を阻害する要因として何が考えられるか。例えば、教育長のリーダーシップ、首長部局との連携協力、学校との連携、保護者・住民との関係、教育委員の資質能力、ビジョン・基本計画の策定など、(3)変化への対応に対して、どのような施策を講じているか、(4)文部科学省・都道府県教育委員会との連携協力関係はどうであったか、(5)特に、大きな変化への対応に当たって教育長に求められる資質能力とは何か、(6)教育委員会の対応力ないし組織の健全性を阻害する、教育委員会特有の特性要因とは何か、(7)教育委員会の変革をマネッジする部局(担当者)は誰か。 以上の諸点を考慮に入れて、引き続き文献調査も継続しながらも、本研究の理論枠を確定し、教育長との面接調査と質問紙調査を通じて、本研究の研究課題に取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
①【遅れの理由等】今年度も、コロナ禍という特殊事情のため、教育委員会の組織特性に関する理論枠組の作成が大幅に遅れ、教育長等への面接調査(事例調査)も困難となった。次年度は、収集文献の分析結果等を踏まえ、市町村教育長に対する面接調査を実施するとともに、出来れば全国的な質問紙調査も行ってみたい。 ②次年度の使用計画の概要は次の通りである。 先ず、市町村教育委員会(15団体)に対する事例調査等のため、旅費等(35万円)が必要となる。次に、市町村教育長を対象とした全国調査を行うため、印刷費(25万円)、郵送費(25万円)が必要となる。そのほか、アメリカ文献調査旅費(30万円)及び調査の補助を行うアルバイト代(5万円)、文房具等の消耗品費(3万円)、図書費(20万円)、パソコン購入費(30万円)等も必要となる。教育長に対する全国調査の主な内容は、組織の健全性の概念、組織の健全性を阻害する要因に係わる質問項目となる。なお、今年度の調査も、新型ウイルスの感染状況を踏まえつつ実施せざるを得ない。
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