2020 Fiscal Year Research-status Report
自己変容をもたらすケアリングを通した多文化共生:ESDの適用可能性に着目して
Project/Area Number |
19K02508
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
曽我 幸代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (40758041)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ESD / 変容 / 適用可能性 / 持続不可能性 / 持続可能な開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のねらいは、「異質な他者とともにいることが多文化共生社会につながるのか」を明らかにすることにあった。ESDは人権侵害や環境破壊などの諸問題の学習を通して、自らの生活をふり返り、価値観や行動、ライフスタイルを変えていくことに狙いを置く教育活動である。その要となるのがESDの特徴の一つである「適用可能性」であり、それを高めるために自己と他者との関係性を捉えるケアリングを用いて、他人事とされる持続不可能な諸状況を自分事化していく変容のプロセスを捉えることが本研究の目的であった。 コロナ禍によって当初予定していた国内外スタディツアーを通した調査を実施することができないため、調査内容を変更した。ESDに関心のある若者(教育実践者(教歴20年未満)を含む)20名を対象に、約1年間のESDプログラムへの参加を通して、自らの生活と分断した問題を自分事化する自己変容のプロセスを捉えていく。調査は2020年12月から開始し、調査協力者は毎月1回開催するワークショップに参加する(終了予定は2022年2月で、全15回のプログラムである)。調査方法は、ジャーナル・アプローチを採用し、ESDプログラムに参加する者がワークショップを通して自らの価値観を問い直したり、考え方に気づいたりすることを記録した文書の内容分析、およびワークショップで書かれた内容の分析を行う。 企画されたESDプログラムは、日常の暮らしから遠くの他者との関係、持続可能な開発から考える前半6回分と、身のまわりの他者との関係から持続可能な開発や日常を考える後半6回分からなり、コロナ禍であることから、オンラインでのワークショップにした。初回ではプログラムの説明と、プログラムの方向性を確認するワークショップを実施した。中日および最終日はそれまでのプログラムをふり返り、日ごろ出会わない他者との対話から、自らを客観視する時間としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SDGsに関連して、ESD for 2030から読み解くこと、また学習者主体の教育のあり方や、子どもや若者がいる持続可能な社会を検討することで、これからの教育環境を広義に考察した論考数本を成果として出せた。 また、コロナ禍の長期化により、予定していた調査実施ができないと判断したため、概要に記した通り、調査内容を変更したことにより、調査協力者らの学びの軌跡をつくることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の長期化が予想できるため、概要に記した通り、引き続き国内調査をもとに研究成果を出す予定である。 次(2021)年度内に予定している調査(教育実践者を含む若者らのESDプログラムへの参加から捉える変容のプロセスの明示化)が終わるため、調査協力者による全15回分の記録をもとにして、最終(2022)年度にその分析を行い、成果を調査協力者に報告するとともに、学会発表等を使い、公表していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国内外でのフィールドワークを実施する調査の遂行がコロナ禍によってできなくなったため、次年度使用額が生じた。次年度は変更後の調査遂行に伴い、資料整理をはじめとする事務補助業務を担う研究協力者への謝金およびオンラインワークショップのスムーズな実施にかかる諸経費に使っていく予定である。
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