2020 Fiscal Year Research-status Report
教育を契機としたコミュニティにおけるジェンダー・イデオロギー変容の動態分析
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19K02522
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
野沢 恵美子 中央大学, 法学部, 准教授 (70755777)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 女子教育 / 家族関係 / コミュニティ / ジェンダー / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していたインドビハール州での現地調査が実施できなかったため、国内で1)これまでの現地調査のデータ整理分析、2)現地の学校教育の様子などについてメールやSNSなどで調査、3)州政府発行の初等教育教科書の内容分析、4)女性教育と家族関係、ジェンダー論に関する文献調査、5)一般向けビデオの作成、書籍出版の準備を行った。 1) 2018年までの調査で集めたデータの整理では、農村の女性や女子生徒へのインタビュー内容の再確認と分析、フィルム撮影の古い写真のデータ化や動画などの整理を行った。2) 現地の最新状況に関してのメールやSNSを通しての調査は、農村でのインターネットや電力環境の不十分さと、専門家との情報提供に関する交渉の不調のため、予定通りには進まなかった。 また当初の計画にはなかったが、国内で可能なこととして、一般に他の州よりも「レベルが低い」「不適切」とされる教科内容を具体的に理解するため、3)ビハール州政府刊行の初等教育のヒンディー語教科書の研究に着手した。2020年度は教科書の電子データを入手し、3-4年生の教科書を英訳、2021年度は引き続き、1,2,5年生の翻訳を行う。さらに4) インド全体、また南アジアの女子教育と家族、コミュニティの関係、またジェンダー理論一般の文献を調査し、本研究課題をより広い文脈の中で捉え直した。 研究成果の市民への公表の一環として、5)東京大学拠点のTINDAS「教育と社会班」による初学者向け動画「インド農村の教育(仮)」(京都大学名誉教授押川文子先生と共同制作)を作成し、本研究課題で明らかになったことの一部について解説した(2021年度公開予定)。6)また同「教育と社会班」による書籍「教育から見る南アジア社会(仮)」でも本研究課題での成果の一部を2022年3月に出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で、予定していたインドビハール州での現地調査を行うことができなかった。農村に住むインフォーマントへの連絡を試みものの、当地の不十分なインターネット接続や電力供給、またコンピュータやスマートフォンの普及の遅れ、特に女性の電子機器へのアクセスが極端に限られていることなどから、連絡を取ること自体が非常に困難で、意味のある成果を得ることができなかった。また現地の専門家に情報提供の依頼をしたが、条件面で折り合わず、こちらも不調に終わった。 代わりに、本研究課題をより広い文脈で捉え直すため、また国内でもできることとして、当初の予定にはなかった、ビハール州政府発行の初等教育教科書の研究に着手した。教科書の電子データを入手し、ますは3-4年生のヒンディー語教科書を英語に翻訳した。またジェンダー理論や、インド全土、南アジアでの女子教育と家族、コミュニティや社会に関する、幅広い文献調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響、特にインドでの深刻な状態から、現地調査を実施する見込みが立っていないため、これまでの調査データの分析と、ここまで明らかになっていることをまとめた論文の発表を目指す。 昨年度は農村在住のインフォーマントと専門家の連絡を試みたが極めて困難だったため、目先を変えて別の専門家、ビハール州に拠点を置くUNICEF職員とコンタクトを取る。まずは現地の状況について概要を調査し、その後教育、子どもなどに関して共同研究ができないか、可能性を模索する。テーマとしては、当該職員の専門である「子どもの安全」と本研究課題を結びつけて、「女子生徒の学校での安全」などが可能性として挙げられる。 また昨年度教科書の研究にも着手したため、こちらもこのまま進めて、1,2,5年生のヒンディー語の教科書と、General Knowledgeの教科書の翻訳をひとまず終える。その後内容分析を行い、研究会などなんらかの形での発表を行う。 市民への成果公表の一環として、TINDAS「教育の社会班」での共同企画、初学者向けの動画配信と書籍出版の2021年度中の完成が予定されているため、そこでこれまでの研究成果の一部を発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で、現地調査や学会発表などの旅費と、現地での人件費が執行されなかったため。
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