2023 Fiscal Year Annual Research Report
旧日本委任統治領「ミクロネシア地域」の歴史教育に関する研究
Project/Area Number |
19K02538
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
玉井 昇 獨協大学, 外国語学部, 教授 (70527118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 典子 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00775801)
渡辺 幸倫 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (60449113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マーシャル諸島 / パラオ / ミクロネシア / 歴史教育 / 社会科教育 / 日本統治時代 / 内発的教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では旧日本委任統治領のパラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の歴史教育を対象としてきた。初年度の2019年にパラオで現地調査を実施して以来、2020年以降は新型コロナウィルスの感染拡大によりオンライン調査を中心としながらも、当初予定していた一次調査に準ずる成果を得ることができた。研究期間を延長した2022年度後半からようやく一部渡航の制限が緩和され、2023年2月にミクロネシア連邦にて現地調査を行った。 そうした状況を踏まえて2023年度も再延長し、これまで一度も渡航できなかったマーシャル諸島を訪問し、現地調査を行った。他方では、新たに北マリアナ諸島の調査に着手し、実際に踏査した。また、前年度までに実施した調査結果をまとめ、ミクロネシア連邦に関しては『太平洋諸島学会誌』No.10にて、パラオに関しては『地域政策研究』26巻2・3号にて成果を公表した。最終年度として、2023年10月に北海道大学にて研究大会を実施し、各調査結果を報告の上、全体の総括を行った。 帰結として次のことが見えてきた。第一に、各国が日本統治時代について記述する独自の歴史教科書を有し、一定の学習目標や指導上のガイドライン等を設定している。第二に、ただしその運用は緩やかに現場レヴェルの裁量に委ねられており、各学校や各担当教員によっても教育内容が多種多様になっている。第三に、他方で各島や土地ごとに微妙に形態を変えながら残存する遺物をはじめ、言葉や伝承、慣習といった無形のものも含めると、身近なところで日本統治時代の歴史的名残が確認される。そうしたいわば「歴史的教材」にも視聴覚的に触れたり、あるいは前世代から聞取りながら学ぶような機会も一部には確保されている。その意味で、日本統治時代の歴史教育も、統一的な基礎的教育だけでなく、同時に各地固有の郷土史と個別的教育があってしかりだといえるであろう。
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