2021 Fiscal Year Research-status Report
A comparative study on civic education in Austria and Germany between the two wars
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19K02543
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 政治教育 / 公民教育 / 歴史教育 / 市民教育 / オーストリア / ドイツ / プロイセン / バイエルン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までの,オーストリア,プロイセン,そしてバイエルンの教育課程の分析を発展させる形で,19世紀半ばから20世紀初頭にそれらの地域で刊行された政治科ならびに歴史科教科書の分析を行った。なお,その時期に注目する本研究において,政治科とは市民科(Buergerkunde),国家市民科(Staatsbuergerkunde),そして祖国科(Heimatkunde)のなかの市民科ならびに国家市民科の内容の部分を指す。具体的には,入手できた教科書の数が少ないオーストリアについては,政治科と歴史科の両方の教科書を分析対象とし,一定数を確保できたプロイセンとバイエルンについては,政治科教科書を中心に分析を進めた。 そこから得られた結果は,昨年までの教育課程規準の分析から得られた認識とは異なるものである。すなわち教育課程規準を見る限り,両国の政治教育に対する一般的な理解とは違って,むしろオーストリアの方がプロイセンよりも関係する整備が早かったという結論が得られたのだが,教科書の刊行状況からは,オーストリア,プロイセン,バイエルンのあいだにその開始時期に大きな違いは認められない。これが意味するのは,19世紀のドイツの中等教育機関は,教育課程が要求していないにもかかわらず,政治教育に取り組んでいたということである。 また,前年に注目した憲法との関係では,それだけでなく選挙法の改革と選挙結果すなわち議会における議席の配分状況が,学校教育に影響しているのでないかとの新たな仮説を得ることができた。 以上の研究については,日本カリキュラム学会ならびに早稲田公民教育研究会で発表し,検討したほか,早稲田大学大学院教育学研究科紀要所収論文「オーストリア,プロイセン,バイエルンにおける政治教育の形成過程-1930年代以前の教育課程を手掛かりに-」にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
covid-19のためドイツならびにオーストリアでの現地調査が実施できないことから,オンラインで利用可能なデータベースから資料を収集し,また取り寄せ可能な資料をもとに研究を進めてきたが,教育課程規準や教科書はある程度入手できても,本研究の柱の一つである当時の教育雑誌については資料が入手できず,その分析に着手できずにいる。
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Strategy for Future Research Activity |
covid-19が収束し次第,ドイツならびにオーストリアで現地調査を実施したい。 万一,その見通しがつかない場合には,これまでに収集した教育課程規準と教科書について,これまでの分析から示唆される別の観点から分析することを試み,既に得た知見とあわせて暫定的な研究論文にまとめ,状況が改善するのを待ちたいと考えている。
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Causes of Carryover |
使用額の差はもっぱらcovid-19による海外渡航制限がもたらしたものであり,制限の解除ないし緩和によりドイツならびにオーストリアにおける現地調査が可能になり次第,現地調査を行い,研究計画の遅れを取り戻す予定である。
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Research Products
(2 results)