2022 Fiscal Year Research-status Report
教育における「合理的配慮」の理解とその概念に関する理論的・実証的研究
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19K02551
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中山 忠政 弘前大学, 教育学部, 講師 (30305809)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障害者権利条約 / インクルーシブ教育システム / 合理的配慮 / 事前質問事項 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年9月に、国連の障害者権利委員会から送付された(10月公表)、「List of issues(質問票)」を対象とした、分析を行った。第24条には、(a)~(c)までの3つの質問が示され、(b)には、「全てのレベルにおける一般の(mainstream)教育において障害者に対する合理的配慮の拒否を防ぐためにとられた措置」を含む質問がなされていた。この質問は、「合理的配慮」そのものについて尋ねるものではなく、条約第2条(定義)において、「合理的配慮の否定(denial of reasonable accommodation)」は「障害にもとづく差別に含む」ものとされており、「障害に基づく差別」に関係させた質問であったと言える。また、この質問においては、「一般の教育において(in mainstream education)」とされ、とられた「合理的配慮」が、一般的な教育場面における「合理的配慮」に限定するものであった。そもそも、合理的配慮は、条約第2条(定義)にあるように、「他の者との平等を基礎とし」たもの、つまり、インクルージョンを目指すためのものであるのに対して、わが国では、分離された教育の場における支援を含めて「合理的配慮」とする理解が広がっている。(b)の質問においては、「一般の教育において」とされ、それ(「一般の教育において」)以外における合理的配慮について回答することができないものとされていた。 これらについては、日本特殊教育学会第60回大会(2022年9月19日)において「第24条(教育)に関する事前質問事項 (a)の質問内容の分析」、日本発達障害学会第57回研究大会(2022年12月24・25日)において「第24条(教育)に関する事前質問事項 (b)と(c)の質問内容の分析」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、課題①(国外)と課題②(国内)の大きく2つの構成で進めている。締約国報告が2016年6月に提出されて以降、いわゆる国際的監視(モニタリング)の枠組みを対象とした、分析を行っている。2021年度までは、初回報告とパラレルレポートを対象としてきたが、2022年度は、事前質問事項(2019年9月)を対象に検討を行い、その成果は、「研究実績の概要」に示したとおりである。 また、『福祉社会学研究』(第19号)の特集論文として、「なぜ、教育におけるインクルージョンは、進まないのか? 」が掲載された。これは、第19回福祉社会学会大会 (2021年6月)のシンポジウムを受けたものであるが、この中でも、合理的配慮を「権利」の観点から理解すべきものであることを述べるなどしている。 このように、事前質問事項まで検討を進めてきたとともに、その成果の公表も、進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年9月に、国連の障害者権利委員会による「総括所見」が示されたことから、これについての分析を行いたい。総括所見においては、20箇所程度の「合理的配慮」についての記述がみられるが、このうち3カ所が、第24条(教育)に関するものである。第24条においては、「特別支援教育の廃止(ceasing segregated special education)」や「特別支援学級に関する通知」の撤回など、強い勧告がなされており、これらの分析とともに、合理的配慮についても検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表を行った、4つの研究大会のうち、2つがWEBによる開催となったため、会場までの旅費等が発生しなかった。 次年度における研究を進める中で、学会発表等の費用に充てたい。
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