2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K02554
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
加藤 美帆 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60432027)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不登校 / 長期欠席 / 進路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在不登校と呼ばれる学齢期の子どもが学校に行かない現象について、戦後から今日までの変遷を検討することで社会の構造変動と欠席現象の関係を明らかにすることを目的としている。教育機会確保法成立を契機に不登校への社会的注目が高まっているが、これまで長期の欠席がどのような問題とされてきたのか、また、欠席の社会的な背景についての検討も不十分な状況でもある。本研究は、戦後の長期欠席問題化過程の分析や、1980年代の登校拒否の問題化からおこっていった社会運動の意味の検証、そしてそれらの現代への影響の検討から欠席現象をとらえ直すことで、欠席現象を包括的に検討し、公教育のあらたな形の模索に資する基礎研究を目指すものである。 2022年度にはA自治体が2021年度に実施した中学校卒業後の追跡調査についての検討を主に行った。本調査は、A自治体が不登校経験者の中学校時代の不登校経験や在学中の支援、また進路状況を卒業後5年間の追跡調査から明らかにするために実施した量的・質的調査である。対象年度にA自治体の公立中学校を卒業した生徒のうち不登校とされていた者全員を対象としたものであるため、都市郊外という地域性を踏まえつつも広範な調査対象者に向けたものになており、現代において若者たちに不登校経験がどのような意味をもつかを明らかにするうえで、きわめて貴重なデータである。A自治体の不登校者支援は対象となる生徒の状況やニーズを踏まえた複数のアプローチが存在すること、また民間の教育サービスやNPOとの連携を積極的に進めていることが特徴である。都市部に位置し、利用可能な教育資源は豊富であることから、積極的な関与を行う親たちも少なくない。A自治体の不登校の実態分析から得られる示唆をもとに、今日の不登校現象を読み解くための分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この数年で不登校児童生徒数の増加がすすんでおり、実態の把握が急がれる状況にある。A自治体における中学校で不登校を経験した生徒の卒業後の追跡調査への参画により、自治体による公的な不登校者支援体制の多様化が進んでいること、中学校卒業後の進路においても不登校経験者を対象とした場所の増加と、その後の大学進学への経路の保障についても確認することができた。新型コロナウイルスの感染拡大期を経て、研究計画にも変更が生じたが、A自治体の調査から研究を進展させる道筋はおおよそ見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度が最終年度にあたるため、これまでの実績を総括する予定である。1980年代の登校拒否の問題化過程についての分析、および現代の不登校者の増加状況についての分析の両者を接続することで、1980年代から今日にいたるまで、つまり学校教育をめぐる後期近代における状況を欠席現象から読み解く枠組みの提示を目指したい。
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Causes of Carryover |
購入を計画していた図書の刊行が遅れたこと等で次年度使用額が発生した。当該研究費は予定していた図書資料の購入にあてる予定である。
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