2020 Fiscal Year Research-status Report
教育財政ガバナンスの理念と構造に関する日・米・英制度比較研究
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19K02560
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 拓児 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60345874)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育行財政 / 福祉国家 / ユニバーサル・ベーシック・サービス / 教育の無償化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、英米での海外調査を行う予定をしていたが、新型コロナ感染症問題が生じたために、渡航予定を中止せざるをえなかった。そのため、本年度の研究は、福祉国家論における教育行財政制度の位置づけを分析し検討している海外文献を収集することと、近年の福祉国家研究の到達状況を把握することを中心的な課題とした。その中でも、福祉国家における社会保障の基本的な仕組みを「普遍的現物給付」としてとらえ、ベーシック・インカムではなく、ユニバーサル・ベーシック・サービスの拡大普及を打ち立てる制度構想がみられ、このなかに教育の現物給付(すなわち無償提供措置)が位置づけられていることを確認した。 また、ニュージーランドでは、大学・高等教育授業料の無償措置の制度化に踏み切るなど、新自由主義教育改革から転換して、新しい福祉国家的教育施策を展開してきている。そのため、ニュージーランドにおける近年の教育改革施策に着目し分析をすすめた。研究成果の一部は、「ニュージーランドの学校自治と教育スタンダード」として、日本教育政策学会27回分散大会のオンラインシンポジウムにて研究報告し(2020年11月15日)、ニュージーランドのマーティン・スラップ教授(ワイカト大学)、勝野正章教授(東京大学)、荒井文昭教授(東京都立大学)とディスカッションを行い、分析結果の妥当性の検証をすすめた。その際、ニュージーランド新政権の福祉国家的教育施策の新しい動向や方向性について参考となるいくつかのアイデアの提供を受けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、予定していた英米渡航計画が中止となり、英米の教育制度に関する現地ヒアリング調査ができていないことは、本研究の進捗にとって深刻な事態となってはいるものの、海外文献をインターネットで取り寄せ、追求すべき課題にみあういくつかの重要な資料・文献を入手できたことは非常に大きな成果であった。次年度において、これらの資料・文献を手がかりとしながらピンポイントで海外調査が実行できるならば、十分に研究の遅れを挽回しうる準備が整いつつある。したがって、これまでの達成状況を「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究申請段階で計画をしていた海外渡航調査は、今なお実施可能性が見通すことが出来ない状況にあり、今後の研究の推進方策としては、海外調査が可能となるまでに、国内での研究準備が重要な課題となっている。そのためには、次年度の前半段階で、(1)英米の福祉国家論・福祉国家構想に関する研究をできるだけ収集し、そこにおける教育財政の制度原則を明らかにすること、(2)なかでも注目される福祉国家構想研究者と事前に研究的な交流をすすめておくこと、(3)戦間期ならびに戦後初期の福祉国家形成期における、英米の教育費無償化政策の歴史資料の収集と資料の保存先をあらかじめ特定しておくこと、をすすめ、次年度の後半段階での海外調査を効率的に行うことを計画する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染小の拡大にともなう影響により、予定していた海外渡航の計画を中止せざるをえなかったことや、予定していた学会発表がオンライン開催となったりしたこと等により、旅費として確保していたものの一部が未執行となったため。
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Research Products
(1 results)