2019 Fiscal Year Research-status Report
Educational policy research supporting failing cases to retrieve its independence and autonomy
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19K02569
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
広瀬 裕子 専修大学, 人間科学部, 教授 (40208880)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 介入支援政策 / 自律性の機能不全 / 教育経営 / イギリス / ハックニー / 地方教育行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自律的な教育経営を推奨する政策の下での、自律的であることが期待される経営母体が機能不全を起こした場合の対応を、とりわけ重篤なケースの支援に注目して問題状況と対応政策の実態を明らかにしつつ理論的な検討を付すことを目的としている。本研究が端的な事例として注目しているのは、ロンドンをはじめとしたイギリスの事例である。 イギリスでは機能不全を起こした地方教育行政を中央政府が介入支援を行って修復する政策が、まずは1990年代末からロンドンのハックニー区において試行された。中央政府による強制的介入支援という賛否ある支援手法の導入である。この手法はハックニー区の教育改革というリーディングケースには顕著な効果を発揮している。その成果が確認された2010年代中期以後、他の困難ケースへの応用を目的として手法の汎用的な体系化が進められている。 本研究は、アクターが機能不全を起こした場合の対応政策として、イギリスの政策事例を無視できない事例でありなおかつ地方自治という原則に照らしても理論検討を要する事例だと判断し、当地における当該政策の実情を明らかにしつつ理論的考察を進めている。 今年度の現地調査は、事例の追跡調査としてハックニー区の教育行政の現状、とりわけその商業部門の活動状況の実際を知るためにHackney Music Education Conference 2019に参与観察を行い、加えて関係者へのインタビューを行った。カンファレンスを主催しているHackney Music Service (HMS)はThe Hackney Learning Trust (TLT)の商業部門の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集済みの資料を整理分析するとともに、対象事例の追跡調査を並行させている。資料収集の対象は、主として中央政府と介入支援の対象となる地方当局それぞれが公開している文書や情報である。現地の追跡調査は、ハックニー区の教育行政の現状について、とりわけその商業部門の活動状況の実際を得るためにHackney Music Education Conference 2019における参与観察および、関係者へのインタビューを行った。 カンファレンスを主催しているのはThe Hackney Learning Trust (TLT)の商業部門の一つであるHackney Music Service (HMS)である。TLTというのは同区の大規模な教育改革時にその改革を担った組織である。TLTは、改革当時は民間組織であったが、改革後は区の行政部門に組み込まれる形で、引き続き同区の教育行政を担っている。 TLTは、改革で培ったノウハウの蓄積を改革は後他の組織(主要にはアカデミーなどの独立予算を持つ学校や区外の学校)に有償で提供するサービスをいち早く発足させ、貴重な収入源としている。自らが保有するサービスを有償で提供するこの方法は、現在は多くの地方当局でも採用されるようになっている。この動き、すなわち教育サービスを商業的に提供する方法の拡大の動きは、全国的に学校の大掛かりなアカデミー転換が進むなか、中央政府からの教育予算は各学校に直接配分されて地方当局への中央政府からの教育予算配分が減少する動きに連動している。 HMSは、当然ながら学校に対しては各種の音楽教育プログラムを提供するリソースバンクないし人材バンクであると同時に、音楽の(高度の教育サービスを保有している)プロフェッショナルに対しては、多様な仕事を多様な形で提供する雇用と収入を配分提供する人材派遣のオーガナイザーとしても機能している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、事例の追跡調査を継続しつつ、事例の理論分析にも重きを置いていく。 今までのところは、当初の研究計画に沿って資料収集及び理論研究ともに進捗しているが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で海外渡航のみならず人との接触が大幅に自粛要請される状況が続いており、事態の収束が見込めない。日本及びイギリスのこうした状況に鑑み、次年度以降、とりわけ2020年度の現地調査については中止ないし延期もありうる。その場合には、資料収集は現地調査をしなくても入手できる例えば公的文書などを中心に行い、すでに収集した資料・情報の分析と理論研究に重きを置きながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
資料整理のためにアルバイトを雇用する予定であったが、今年度は雇用せずに資料整理が行えた。 翌年以後の計画の微調整で、経費の使用計画に大きな変化は生じない。
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Research Products
(4 results)