2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis on the restaint factors in Japanese cultural and institutional milieu.
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19K02572
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加藤 潤 愛知大学, 文学部, 教授 (80194819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 隆博 中部大学, 人間力創成総合教育センター, 准教授 (10454448)
今津 孝次郎 星槎大学, 教育学研究科, 教授 (30025118)
林 雅代 南山大学, 人文学部, 准教授 (40298550)
白山 真澄 (白山真澄) 東海学院大学, 人間関係学部, 教授(移行) (60726909)
長谷川 哲也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (90631854)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学び直し / リカレント教育 / 学歴 / 格差 / 教育再生実行会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、コロナ禍のため遅れていた研究成果の発表と、これまで発表した研究成果を共著にまとめる作業に着手し、大きな進捗をみた。 1)研究成果の発表については、本年度、中部教育学会紀要(第22号)に「社会人の学び直しを支える学習意欲―地方企業を対象とした質問紙調査の結果からー」と題する論文を、査読審査の上、発表できた。ここでは、学び直し意欲は、あらゆる属性でかなり高いことが分かった反面、意欲の高低には、学歴差が有意で存在することが発見された。すなわち、学び直し政策は、高学歴者に有利に働く可能性があることが、初めて実証されたのである。 続いて、学び直し政策を歴史的にレビューした論文(「『学び直し』言説の誕生と変容-平等化言説から市場化言説へー」愛知大学教職課程研究年報、第11号)を発表した。これまでの先行研究では、戦後のリカレント教育政策から学び直し政策への変化が、どのような社会的、政治的要因で起きたのかが整理されていなかったことから、新たな知見を提供した。 2)これまで3年間にわたって調査、分析、成果発表を重ねてきたが、この蓄積は、学び直し政策を議論するための基礎的資料、論説になっており、社会全体に広く「学び直し」政策のメリットデメリットを議論するために公刊する意義があると考え、本年度は、共同研究者各自が発表した論文10本ほど集約し、一冊の共著として刊行する企画を立ち上げた。各経堂研究者の論文原稿を、大きなテーマに集約し、それぞれを章立てとし、整合性、議論の流れを詳細にチェックしたうえ、原稿を書き直し、出版企画とした。様々な出版社に出版を打診した結果、東信堂が出版企画を採用し、現在、第一原稿が入稿された。これから、修正、加除等が続き、次年度、22年度一年延長した科研費の終了と同時期に公刊できればと計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍があり、出張等の制限がかかり、研究の進捗は妨げられたが、海外調査を初年度、コロナ前に行い、質問紙調査もコロナ発生直前に配布し、パンデミックと同時に回収し終わっていたため、分析にはさほどの障害はなかった。日本人に対する「学び直し経験」の聞き取り調査は、分担者が感染予防に留意しながら、リモートインタビューも併用して行ったため、結果としては、ほぼ当初の計画通りすすんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の計画は、先に、成果の欄でも述べた通り、これまで発表した研究成果を、一冊の共著として刊行する作業に集中する。この共著は、学び直し政策の歴史的分析から、日英の学び直し意識比較調査、個人史における学び直し経験、質問紙による企業従業員の学び直し分析まで含み、これまでに見ない、包括的な著書になると考える。とりわけ、実証的分析においては、学び直し促進論とは逆に、学び直しの危険性、すなわち、不平等の拡大を生む懸念を、我が国では初めてデータ分析で示したものとして貴重な成果と考える。 この刊行作業と並行して、本研究で収集した質問紙データ、聞き取り調査データ、文献目録等、すべてのデータを、個人情報を伏せた形で、アーカイブ化する作業を進めたい。このアーカイブスは、今後、学び直しを議論する際、多くの研究者、政策担当者に利用してもらう予定である。それによって、学び直し政策が、専門職、高学歴中心の経済政策である現状に対して、もう一つの学び直し政策、すなわち、国民の平等と幸福に資する政策が必要であることを、広く社会に発信したいと考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度、当初予定していた第二回目の海外調査がコロナ禍により不可能になったことに加えて、共同研究者による学び直し意識インタビュー調査も、すべてオンライン調査になったことから、旅費の支出がなかったことが大きい。また、分析資料、データのアーカイブス作成作業を次年度に延長したことから、2022年度に、1)海外、国内フォローアップ調査及び、2)資料、データファイル化を行う予定であり、そのための繰り越し分を確保した。
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Research Products
(3 results)