2021 Fiscal Year Research-status Report
異文化間教育の抱える課題とその克服に向けた理論的研究-移民社会ドイツに着目して-
Project/Area Number |
19K02577
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 亜希子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (70570266)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インターセクショナリティ / 異文化間教育の課題 / ドイツ / 移民社会 / 多様性 / 教師教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移民社会ドイツにおける異文化間教育の課題とその克服に向けて展開される政策、研究、実践の相互作用に着目し、この三者間の相互作用がいかに有機的に結びつけば、包摂社会の構築に向けた異文化間教育の実現に至るのか、その実相について理論的研究を行うことを目的とする。 具体的には、異文化間教育の抱える課題の克服に寄与する2013年異文化間教育勧告と異文化間の学校開発に着目する。この勧告を制度的基盤にした連邦及び州レベルの政策展開、異文化間教育関連研究の進展、異文化間の学校開発に資する実践の普及から、政策、研究、実践の三者間の連関を捉える。 これまでの文献研究による研究成果を踏まえ、移民背景を持つ教師の導入、教師の異文化間能力、異文化間の学校開発に関し現地調査の実施を望んでいたものの、2021年度も新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため叶わなかった。そのため、引き続き文献研究に注力した。インターセクショナリティを分析の視点にした際、権力に関する問いが異文化間教育学において不十分であるという課題を2020年度に明らかにしたが、引き続きこの点に焦点化し、2021年度も文献研究を進めた。その結果、以下の2点が課題として残されている。第一に、インターセクショナリティを分析ツールと用いた際のカテゴリー化の課題である。第二に、インターセクショナリティの観点から差別を捉えた際にそれに異文化間教育はどのように取り組みうるのかという課題である。第二の課題については、異文化間の学校開発がその方途になり得ることから、異文化間の学校開発については改めて学術的・実践的動向を見直す必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、現在のところやや遅れている。 2年続けて現地調査を実施できなかったことが大きな要因である。しかしながら、コロナ禍において今年度はオンラインで学会が開催されたため、文献研究の進捗について成果を発表する機会を持つことができた(異文化間教育学会第42回、日本比較教育学会第57回)。
|
Strategy for Future Research Activity |
本来であれば2021年度が本研究の最終年度であったが、文献研究により整理した点が政策や実践にどのように影響を及ぼしているのか否か等、現地調査で確認することが不可欠であると判断したため、研究期間の延長を申請した。 これまでの文献研究の成果を踏まえ、2022年度は昨年度に引き続き、以下の2点を課題として設定し、本研究を総括できるよう、政策・研究・実践の三者の連関に焦点化した分析を進めていく。第一に、移民社会における教師の専門職性に関する議論を整理する。第二に、インターセクショナリティを分析ツールとした際に浮上する異文化間教育の課題への応答、すなわち権力関係への問いに対し、政策・研究・実践の面においていかに応じようとしているのか検討する。 これらについては、異文化間教育学会や日本比較教育学会での発表、所属機関の研究紀要や学会紀要への論文投稿を目指す。また、国際異文化間教育学会(International Association for Intercultural Education)での成果発表をも視野に入れ、国際的な議論に日独の議論を位置づけられるよう検討を進めていく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のため、2020年度に引き続き2021年度も現地調査が不可能となった。また、国内学会についてはオンライン開催になり、旅費が発生せず、文献研究の資料収集に支出が限られたためである。 研究費を繰り越しし、期間延長を申請したため、研究成果をとりまとめられるよう引き続き異文化間教育、反人種主義教育、インターセクショナリティに関する図書・資料の購入、新型コロナウイルスの状況が落ち着いた際の現地調査に向けての旅費に用いる計画である。
|
Research Products
(4 results)