2022 Fiscal Year Annual Research Report
異文化間教育の抱える課題とその克服に向けた理論的研究-移民社会ドイツに着目して-
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19K02577
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 亜希子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (70570266)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インターセクショナリティ / 異文化間教育 / 権力 / カテゴリー / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移民社会ドイツにおける異文化間教育の課題とその克服に向けて展開される政策、研究、実践の相互作用に着目し、この三者間の相互作用がいかに有機的に結びつけば、包摂社会の構築に向けた異文化間教育の実現に至るのか、その実相について理論的研究を行うことを目的とする。 異文化間教育の抱える課題として、異文化への着目による二項対立の強化や受け入れ社会の構造的差別の要因の看過が挙げられる。これらについて、インターセクショナリティを分析の視点にした際に、権力に関する問いが異文化間教育学において不十分であるという課題を明らかにした。ただし、インターセクショナリティを分析ツールとして用いた際のカテゴリー化の問題が課題として残された。 今年度は、上記の課題を念頭に、インターセクショナリティを分析ツールとして用いた際のカテゴリー化の問題について文献研究を進めた。特に、権力関係や差別の構造を分析するツールとされる点に着目し、その分析の特質と異文化間教育の課題を検討し、以下の点を明らかにした。分析の特質として、マクロ、メゾ、ミクロレベルを往還しながら権力や支配関係を明らかにすることを試みる点である。カテゴリー化については、カテゴリーへの自己批判とそれを更新していくこと、単にカテゴリーを放棄するのではなく、その生成には専門知が影響するということに対する自覚が挙げられた。ただし、こうした分析の特質が政策や理論に具体的に何をもたらしているのかという点までは踏み込んで検討することができなかった。 これらの研究は、特に権力性といった日本の異文化間教育が抱える課題を克服するための突破口を探るものである。4年間の研究成果を踏まえ、日本の外国人児童生徒等教育と教師教育について異文化間教育の視点から整理し、ブレーメン大学が主催する連続講座の一つとして成果報告を行い、研究協議を行うことができた。
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Research Products
(6 results)